兵庫県の播磨科学公園都市に、理化学研究所の大型放射光施設「Spring-8」がある。高精度の維持管理が要求されるこの施設を、トップライズ(本社:新潟市秋葉区)の技術陣が3Dレーザースキャナーで3D計測を行った。同社独自の計測ノウハウにより、70GBにも及ぶ点群データの結合誤差はわずか1mm以内。発注者も「維持管理に十分使える精度」と評価した。
点群の結合誤差を1mm以内に抑える
理化学研究所の大型放射光施設「Spring-8」は1997年10月に稼働開始後、20年近く使われてきたため、実験室の改造などで建設当初の図面と現況が合わない部分も増えてきた。
そこで同施設の運用を担当する高輝度光科学研究センター(JASRI)は、3Dレーザースキャナーによる施設内の計測を試験的に行い、今後の維持管理業務などに使えるかどうかを検証することになった。その計測を行ったのがトップライズだ。
同社の技術陣は2016年1月27日、28日の2日間、ライカの最新鋭3Dレーザースキャナー「P40」を使ってリング状電子加速器の一部と、電子加速器から取り出した放射光を使って実験する「ビームライン」と呼ばれる実験棟の内部を計測した。
「リング状の加速器は約50mの区間を8カ所から計測しました。高密度で計測したため点群データの容量は約70GBにもなりましたが、点群同士を結合するレジストレーション作業の誤差は0~1mmの範囲で収めることができました」と、計測責任者を務めたトップライズ空間計測課
課長補佐の吉澤康宏氏は語る。
点群の結合、事後処理に独自のノウハウ
これほどのレジストレーション精度を実現できたのは、トップライズが十数年間、3Dレーザースキャナーによる計測に取り組んできた経験や技術、ノウハウが結集されたからだ。
「以前は異なる場所から計測した点群同士を結合すると、ズレが出てしまうこともありました。そこでズレが発生する原因を徹底的に追求し、計測方法を工夫することで高精度の結合が行えるようになりました」と吉澤氏は語る。
1つに結合された点群データはその後、専門スタッフの手によってノイズなどを丁寧に取り除く作業が行われた。
緻密(ちみつ)さが要求される作業を経て、発注者が活用しやすいデータに仕上げ、2月半ばに発注者に納品された。
一般の建物・構造物とは桁違いの要求精度
Spring-8とは、電子を光に近いスピードまで加速し、磁石によって進行方向を曲げることにより強力な電磁波を発生させる実験装置で、世界最高性能を誇る。
全長・周長が数百メートルの直線やリング状の4つの電子加速器に沿って建屋が並び、その内部は温度伸縮による変形を防ぐため常に一定の温度に保たれている。これらの建設地点も、岩盤上の強固な地盤が選ばれた。
トップライズ営業部 技術営業課長の古俣英二氏は「最初の打ち合わせのとき、発注者から3Dレーザースキャナーの周波数について聞かれた。建築や土木の計測では、まず、こんなことはありえない」と驚く。
つまり、一般の建物や土木構造物とは建設や維持管理に桁違いの精度と細心の配慮が求められる計測だったのだ。
納品したデータについて発注者からは「点群が高密度なので、電子加速器の直径数十ミリの金属管も写真のように明瞭(めいりょう)に計測されている。維持管理に十分使える精度だ」と評価された。
今回の点群計測が成功した要因は、トップライズが持つ3Dレーザースキャナーによる現場計測技術、複数の点群を高精度で結合させる技術、そしてデータを高品質な成果品に磨き上げる加工技術があってこそと言えるだろう。
2次元から3次元へ、さらに進化するトップライズ
3D計測の可能性を追求するために、2016年4月14・15日に北海道札幌市にて開催された「岩崎トータルソリューションフェア2016」では、株式会社岩崎との業務提携を視野に協力関係を築いた。両社はさらなる進化を遂げようとしている。
国土交通省より「i-Construction」に伴うICT技術の全面的な活用(土工)の運用が始まり、工事の発注が2次元から3次元へとシフトし始めた。トップライズでは3Dレーザースキャナー及びUAV(ドローン)による3D計測技術を駆使したサービスを提供するために
をスローガンに「妥協なき精度」を追い求め、業務に取り組んでいる。
3次元計測でお困りの方は、トップライズに問い合わせてみてはいかがだろうか。
【問い合わせ】 株式会社 トップライズ 〒956-0864 新潟市秋葉区新津本町2-8-14 TEL 0250-24-8214 ウェブサイト:http://www.toprise.jp/ |