コロナ禍でRevitとBIM 360 Designによるテレワークが拡大
さくらドラフトワークスの設備BIM(オートデスク)
2020年10月13日


2013年に起業した所員9人のさくらドラフトワークス(本社:東京都新宿区)には、スーパーゼネコンや大手設計事務所からオートデスクのBIMソフト「Revit」と「BIM 360 Design」による設備設計サポートやモデリングの依頼が続々と舞い込んでくる。昨今のコロナ禍では、クラウドでのBIMデータ共有とオンライン会議によってテレワークが拡大した結果、むしろ生産性が向上した。創業以来のBIMによる海外展開も視野に入ってきた。

RevitやBIM 360を使い、BIMによる設備設計を進めるさくらドラフトワークスの設計者たち

 設備BIMニーズの拡大で増員も検討

さくらドラフトワークス
代表取締役
臼田 英司 氏

建設業界では今、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による設備設計ニーズが急拡大しているようだ。

東京・新宿に本社を置く、さくらドラフトワークスも例外ではない。2013年に創業し、所員9人が働く設備設計会社だ。

「もともと設備設計の仕事をやっていました。しかしBIMと出会って可能性を感じ『これからはBIMに集中して設備設計を変えていこう』と思って独立しました」と笑顔で話すのは、さくらドラフトワークス代表取締役の臼田英司氏だ。

取材した2020年8月下旬の段階では、大・中規模の複合施設、オフィスビルと集合住宅、競技場や複合施設、研究所、教会など、幅広い用途の建物にて設備BIMを活用していた。

「国内ではスーパーゼネコンや大手設計事務所から建設コンサルタント、さらに海外オーナーの物件まで、ありがたいことにたくさんの依頼を頂いています。最近は所員の増員も検討しているところです」(臼田氏)というほど、設備BIMの仕事が増えている状況だ。

活気あふれるさくらドラフトワークスのオフィス

 BIMとクラウドによるテレワークで生産性向上

同社は2013年、創業時にオートデスクのBIMソフト「Revit」を含むBIMソリューション「AECコレクション」を導入している。合わせて最近では同じくオートデスクのクラウド・ソリューションである「BIM 360 Design」も導入することで、より生産性の高いBIM業務を行っている。

「BIM 360」では、BIMモデルデータを発注者とクラウド上で共有しながら業務を進めることができる。特に「BIM 360 Design」には「Revit Cloud Worksharing」という、クラウドを利用したRevitのワークシェアリング(協働作業)機能が付いているため、離れていても同じBIMモデルで作業が可能になる。同社では秋田県と千葉県にて在宅で働く2名の社員がいるが、離れていても問題なく業務を進めることができているとのことだ。

また、ひとつのプロジェクトで複数の企業がデータを共有するBIM 360では一般的に外部委託企業は発注者のライセンスを利用してBIM 360に招待される場合が多いが、同社では自社でBIM 360 Designのライセンスを契約している。

BIM 360 Designを契約すると、BIM 360経由でRevitのワークシェアリング機能が利用できる

「最近はゼネコンや設計事務所が、外部委託企業とBIM 360を使ってクラウド上でコラボレーションする業務の進め方が増えてきました。そんなときBIM 360 Designのライセンスを自社で持っていると、発注企業のBIM 360のライセンスを使用せず自分たちのライセンスで参加できるんです。そのため『御社はBIM 360 Designを自社で持っていたよね』と、気軽に仕事を頼みやすいようです」と、臼田氏は語る。

さくらドラフトワークス
設備BIMコンサルティング室
向畑 香里 氏

BIM 360で特に便利に使っている機能は、設計変更指示や作業指示などをBIMモデルに対して付けられる「指摘事項機能」だという。

「以前は発注者と業務のやり取りをするのに図面に雲マークを付けるなどして連絡していました。ただ結果的にひとつのプロジェクトでもたくさんの図面ファイルができてしまって、最新の図面ファイルや正しい作業指示を管理するのが非常に大変でした。しかしBIM 360の指摘事項機能を使うことで、BIMモデルに作業の確認依頼を直接示せるようになり、発注者とBIMモデル中心の業務コミュニケーションができるようになりました。そのためメールの利用頻度が減り、図面ファイルや作業指示の管理手間が少なくなったことで、作業効率は良くなったと感じています」と、同社設備BIMコンサルティング室の向畑香里氏は説明する。

BIM 360の指摘事項機能は、作業指示などの内容をBIMモデルにピンを刺して管理できる

加えてBIM 360では保管されたデータが自動でバージョン管理されることもあり、このひとつのデータを発展させていく仕組みもデータの管理コストを削減させている。さらに新旧バージョンを画面上で比較することができる機能があり、複雑なBIMモデルであっても作業変遷を視覚的に表示できる。これにより、指示を出した発注者やプロジェクト管理者など実際に作業を行ってない人であってもBIMモデルの進捗を把握しやすくなっているようだ。

BIM 360ではRevitデータをバージョン管理し、新旧バージョン間でBIMモデルを比較できる

このようにBIMとクラウドを活用することでテレワークを実践していた同社だが、2020年はさらにコロナ禍によって以前のように他社を訪問しての打ち合わせが気軽に行えないようになった。そこでマイクロソフトのコラボレーションツール「Teams」を使い、BIM360やRevitの画面を共有しながらオンラインで打ち合わせする方法が主流になったという。

「以前からテレワークやクラウドの活用に取り組んでいましたが、コロナ禍により発注企業への訪問が困難になったことでRevitのワークシェアリング機能、BIM360による情報共有、Teamsのチャットやオンライン会議、これらを組み合わせた業務スタイルになりました。結果として最近は“移動の時間と労力”がめっきり少なくなり業務効率の改善を実感しています。またBIMモデルの変更や作業指示などの履歴がBIM 360で確認できることもあり、社員の業務状況の確認や社内データの管理のコストも下がってきたように思います」(臼田氏)。

 他社へのBIMコンサルティングも

さくらドラフトワークスは、「設備にからむBIM業務はなんでもこなす」もモットーに業容を拡大してきた。現在は設備BIMにウエイトを置いて展開しているとは言え、がむしゃらにBIMを使っているわけではない。

臼田氏は「業務に取り組む間、常にBIMを使ってどんな効果を生むか、ということを自問自答してきました」と振り返る。

「仕事の依頼を頂いた時に、時折ですが、BIMを使えば何でも簡単にできると誤解されている場合もあります。そんなときは3D形状を利用した干渉チェックなどフロントローディングを行いたいのか、それともBIMのデータベースとしての特長を生かして技術計算まで行いたいのか、BIM活用の目的を発注者と共有して明確にすることが重要だと考えています」と臼田氏は言い切る。

例えば過去には設備BIMのデータベース情報を利用した効率化として、空調機器の仕様一覧表をRevitで自動作成する取り組みを行った。ボイラーや冷凍機、ポンプなど空調機器のファミリに属性情報のパラメーターを登録・管理することで、機器情報の変更に合わせて一覧表も自動で更新される仕組みになっている。同社では発注企業と協力するだけでなく、Revitユーザーグループ(RUG)で公開されているサンプルモデルやRevitの仕様を参考にすることで、設備BIMの新しい動きに合わせる努力を行っている。

「今後はBIMモデルを活用した建築確認申請にも挑戦したい」と臼田氏のBIMに対する意欲は高まるばかりだ。

さくらドラフトワークス
設備BIMコンサルティング室
コーディネーター
柏崎 恵美 氏

常にBIMのあり方を追求し続ける同社の姿勢を見て、他社からBIM活用についてのコンサルティング業務を依頼されることもあるそうだ。

そんなとき講師を務めるのは、設備BIMコンサルティング室コーディネーターの柏崎恵美氏だ。「25年前に設備設計のCADオペレーターを始めてから、ずっと設備設計の仕事を続けてきました」(柏崎氏)という柏崎氏は、Revitだけでなく設備関係の様々なCADソフトの使用経験がある。

そのキャリアと経験を生かしてBIMでの設備設計業務のかたわら、他社へのコンサルティング業務での講師を務める。

先の向畑氏は十数年間、アパレル会社や木材会社に勤務していたが、建築士になる夢を忘れられず約2年前に同社に飛び込んできた。ちょうどその時、柏崎氏がBIMコンサルティングの講師を行っており、向畑氏はテキスト作成などの仕事を手伝った。その結果、向畑氏もRevitをマスターし、自社用のBIMマニュアルも整備されることになった。

これはBIMの活用効果を常に考える同社らしく、他社へのコンサルティング業務、自社のBIMユーザーの育成、そしてBIMマニュアルの作成と、“一石三鳥”のBIM活用効果を実現したのだ。

 社名に込めた海外展開への夢

さくらドラフトワークスという社名には、創業時から温めてきた海外事業への夢が込められている。

「『さくら』は日本を象徴するものであり、海外の人にもよいイメージで受け止められます。いずれはワールドワイドに事業を展開したいと思い、この社名に決めました」と臼田氏は社名の由来を明かした。

その夢は実現に近づきつつある。現在は米国オーナーが日本に建設する教会やオフィスビルの設計を他の国内設計事務所とともに手がけているのだ。BIMモデルをBIM 360で共有することで、離れた米国のオーナーとも設計が共有できるようになっているのだ。

「将来は海外事務所を立ち上げ、自社で開発したノウハウを世界に広めていきたいと考えています。そのときは、われわれ日本人だけでなく、現地の人も幸せにしないとダメです。ローカルルールを大事にした事務所を作っていきたいです」と、臼田氏は夢の実現に向けて抱負を語ってくれた。

【問い合わせ】
Autodesk Revit 日本公式Facebook
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