管理人のイエイリです。
東日本大震災から1年が過ぎました。しかし、日本列島はいつ、どこで巨大地震が起こっても不思議ではない状況にあります。
大都市では、多くの帰宅難民が発生することが予想されており、地震時の対応も「直ちに帰宅する」から、「オフィス内にとどまる」に方向が修正されつつあります。
そこで、オフィスビルに求められているのが、地震の後にビルで働く人や周囲の人たちの安全を守るインフラとして稼働し続けるタフでやさしい「BCP(事業継続計画)」機能です。
そこで三井不動産は、オフィスビルなどの防災対策を強化するため「オフィスビル設計指針」を改定したことを発表しました。
改訂後の指針では、今年2月に竣工した「横浜三井ビルディング」など、今後、開発するオフィスビルについては、
ナ、ナ、ナ、ナント、
72時間対応の非常用発電機
を標準装備するというのです。
首都直下型地震など大規模災害が発生したとき、ライフラインの復旧まで3日間(72時間)を要するとの仮定に基づき、その間、エレベーターやトイレ、換気などの主要施設を稼働させることができるようにしたものです。
このほか、標準的なビルでは専用室内に15VA/m2の電力を供給し、テナント企業も事業継続ができるようにします。
非常用発電機(左)と燃料タンクの一部(右)(写真:三井不動産。以下同じ) |
非常時に困るのがトイレです。そこで非常用井戸や雨水利用、汚水の再利用などによって雑用水を確保するとともに、緊急時用の汚水槽などを設置し、停電や上下水道が途絶しても、トイレの使用が可能になっています。
また、換気については開放可能な窓を設置したり、非常用発電機で換気設備を動かしたりできるようにします。
このほか、重要なのが通信システムの確保です。非常時には、
一般回線に依存しない
複数の情報通信ネットが使えるようになっています。
例えば、光回線の専用線を確保し、東京・日本橋の本社ビルにある「危機管理センター」と各ビルを結ぶ「TV会議システム」や、衛星携帯電話や専用線電話、IP電話など、複数の通信インフラを整備します。
また、被災状況や公共交通機関の復旧状況、ビル設備の使用可否などの情報を提供するため、エントランスホールなどにTVモニターを設置します。
東京・日本橋の本社ビルにある危機管理センター(左)とTV会議システム(右) |
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情報提供用のTVモニター(左)。一般回線に依存しない様々な通信設備(右) |
これだけのハード、ソフトの対策がなされているビルなら、いざというときにも安心して働けそうですね。
私が感心したのは、さらに一般の帰宅困難者も可能な限り受け入れ、水や食糧、防寒シートも備蓄するという方針が示されていることでした。
先日、当コーナーでご紹介しました「住友不動産新宿グランドタワー」でも、同様に帰宅困難者の一時避難場所を提供するそうです。
自分たちの安全は自分たちで守り、さらに余力を一般の帰宅困難者に提供するという大都市圏での助け合い精神と対策が広まることを期待しています。