管理人のイエイリです。
建物内部の空気は、室内中央でのCO2濃度が1000ppm以下に保つことが必要です。そのため、空調システムでは建物内の空調された空気の一部を捨てて、新鮮な外気を取り入れることを常時行っています。
これまではCO2濃度の基準に対する安全率を確保するためには、多めの換気を行いがちだったのではないでしょうか。
そのとき、問題なのはエネルギーも捨てていることです。例えば夏場はせっかく空調機で冷やされた空気を捨てて、暑く、湿った外気を取り入れて再び冷やすときに多大なエネルギーを使います。冬場はその逆でせっかく暖められた空気を捨てて、冷たく、乾燥した外気を再度暖めて加湿しなければなりません。
そこで戸田建設の技術者たちは「換気での無駄」に注目し、無駄な換気を減らすことによる省エネ技術の開発に取り組んでいます。
そのポイントとなるデバイスは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
小型のCO2濃度センサー
なのです。
このCO2濃度センサーは村田製作所が開発中のもので、外形寸法は40×25×13mm (予定) です。その精度は高く、CO2濃度に応じた空調制御に利用できるレベルです。
これを室内やダクト内などに取り付けて、人がいるところは換気を増やし、いないところは換気を減らす「タスク&アンビエント換気」を行うことで空調負荷を減らし、省エネを図ろうという進んだ発想です。
村田製作所が開発中のCO2濃度センサー(写真:戸田建設) |
CO2濃度センサーを使った「タスク&アンビエント換気システム」のイメージ(資料:村田製作所) |
村田製作所と戸田建設は、戸田建設技術研究所内の実験室をオフィスに見立て、最大6人が入退室することによるCO2濃度や換気量の変化について検証しています。
その結果、CO2による制御がある場合は、最大約30%の換気量の差があることが分かりました。これは消費電力にも反映されるため、1万m2程度の事務所ビルの場合、年間約1万kWhの省エネが実現できることになります。
室内に人が入っての実験風景(左)。センサー群で換気量を最適に制御(右)(写真:以下は戸田建設) |
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電気毛布を使った模擬人体発熱実験も実施した |
このCO2濃度センサーは小型、高精度、低価格と3拍子そろった特徴を持っています。現在はエアコンや冷蔵庫などの家電製品やビル空調向けの用途を想定していますが、将来はビルエネルギー管理システム(BEMS)のほか
植物工場への導入
も検討しているそうです。
CO2濃度センサーを組み込んだシステム模型。戸田建設本社ビル内の環境展示コーナーに展示されている |
オフィスビルで働いていると、時々、ビル管理者が室内のCO2濃度などを測っている風景を見かけます。将来はこのCO2もセンサーで常時見える化され、空調制御システムに導入されそうですね。日本の空調や省エネ技術は、世界に誇れるものだと思いました。