作業時間50%減!大林組がBIMと熱負荷計算システムを連携
2012年7月19日

管理人のイエイリです。

関東から四国、中国地方にかけての地方では梅雨が明け、本格的な夏がやってきました。東日本大震災以降の省エネルギーや節電のため、建物の空調設計では設定温度を上げながら、部屋ごとに最適温度を設定したり、居住者の快適性を維持したりという相反する条件をクリアするという、高度な要求があります。

そこで大林組は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のデータと、最新の熱負荷プログラムを連携させることにより、きめ細かく、高品質な空調設計を簡単に行える熱負荷計算システムを開発しました。

BIMモデルデータと熱負荷計算プログラムを連携させたのは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

国内初の試み

 

なのだそうです。

空調設計では、日照や外気の影響を受けやすい窓際と、外的な影響を受けにくい建物中央部を分けるなど「ゾーン分け」を行い、ゾーンごとに空調設備の検討を行います。

従来は図面を基に、手作業でゾーニングを行い、熱負荷計算を行っていました。そこで、BIMソフトを使って、ゾーンごとに各種面積を自動計算し、熱負荷計算用のデータが効率的に作成できるようにしたのです。

このほか、熱負荷計算プログラムの入力データを作成したり、計算結果を集計したりするために表計算ソフト「Excel」によって入出力支援システムを新たに開発しました。その結果、高品質で高精度な空調設計が簡単にできるようになり、作業時間は従来に比べて50%減になったそうです。

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BIMと連携した熱負荷計算のワークフロー(左)と計算結果(右)(資料:大林組)

熱負荷計算プログラムには、高精度の動的熱負荷計算プログラム「NewHASP/ACLD」を使っています。

このプログラムは、空調ゾーンごとに過去の室温や熱負荷の変動履歴を考慮して現在の室温や熱負荷を求める時刻別非定常計算や、5種類の夏冬ピーク代表日の熱負荷に基づく周期定常計算といった高度な計算が行えます。

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「3.NewHASP/ACLD」を無償公開している建築設備技術者協会のウェブサイト(資料:建築設備技術者協会)

ところで「NewHASP/ACLD」の原型となった「HASP」というプログラムは、

 

27年前の1985年に開発

 

された歴史あるソフトとのことです。

HASPは今年1月に亡くなった東大名誉教授の松尾陽先生が開発したもので、開発当初から公開したいと希望されていたそうです。松尾先生の遺志を引き継いだ後継者たちの努力により、今年4月に建築設備技術者協会のウェブサイトで無償公開されました。

その歴史あるプログラムが今回、BIMと連携し、最新の空調設計システムとして使われていることは、天国の松尾先生もきっと喜んでおられるでしょうね。

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