管理人のイエイリです。
100℃未満の温水をエネルギー源として利用するのは、これまでなかなか難しい面がありました。そのため、工場などでは温排水として捨てられていることがほとんど立ったのではないでしょうか。
こうした未利用のエネルギーを有効活用しようと、IHIは画期的な発電機を開発し、商品化のめどを立てることができました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
70~90℃の温水で発電
できる小型バイナリー発電装置「ヒートリカバリー“HRシリーズ”」というものです。
小型バイナリー発電装置「ヒートリカバリー“HRシリーズ”」プロトタイプ機の外観(左)とタービン発電機の外観(右)(写真・資料:IHI。以下同じ) |
普通の発電機はボイラーで水を沸騰させ、その蒸気の力で発電機のタービンを回すという仕組みです。このバイナリー発電装置は水の代わりに沸点の低いフッ素系媒体を使います。
媒体の沸点が低いため、100℃未満の「低位熱」でもボイラーとなる蒸発器で蒸気を発生させてタービンを回せるのです。その後、媒体は凝縮器で液化され、循環ポンプで再び蒸発器に送り込まれます。これを「オーガニックランキンサイクル方式」と言うそうです。
オーガニックランキンサイクル方式による発電の原理 |
今回、開発された小型バイナリー発電装置は、幅約2m×奥行き約1.4m×高さ約1.6mと小型で、電源系統はAC200V/AC400V、最大出力は20kWです。設置方法も簡単で、蒸発器に供給する温水と凝縮器に供給する冷却水の出入り口配管、そして電源系統を接続するだけです。
タービンと発電機が直結されているダイレクトドライブ構造のため、騒音も少なく、装置の振動もほとんどありません。タッチパネル上ですべての操作が行え、内部状態の確認ができます。温水と冷却水を流して起動するだけで自動的に発電を開始します。
また、循環するフッ素系媒体はオゾン破壊係数ゼロで地球温暖化係数も低く、安全性が高いのが特徴です。低温や圧力の低い状態でも安定した運転ができるようになっています。
さらに便利なのは、
商用電源との系統連携機能
を標準装備していることです。
そのため、温水源があるところにこの装置を分散配置して発電し、太陽光発電と同じように商用電源と接続して使えます。将来、制度が整備された場合には、余剰電力を売電することも可能な仕様になっています。IHIでは2013年の販売開始を目指しており、ラインアップの拡充を図るとのことです。
水力発電では用水路などで発電する「マイクロ水力発電」というものがありますが、バイナリー発電装置は「マイクロ地熱発電」や「マイクロ廃熱発電」の道を広く画期的な製品と言えるでしょう。
このプロトタイプ機は、12月5日~7日に千葉・幕張メッセで開催される「第7回再生可能エネルギー世界展示会」に参考出展されるそうです。