サーバーに冷却塔を接続!NEDOが超省エネ型データセンターを構築
2012年10月4日

管理人のイエイリです。

データセンターの最近の話題と言えば、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った「PUE」という省エネ指標の数値をいかに1に近づけるかということがあります。

一方、データセンターの建設では、IT機器、空調設備、電源設備、建物と、別々の企業によって設計・製作・施工が行われるため、データセンター全体で見るとまだまだ省エネの余地があります。

例えばIT機器の設計者は、小さい空間を有効利用するためにサーバーをぎっしり詰め込もうとし、その結果、換気スペースが十分に取れないため強力なファンを内蔵する方法を採ります。また、設備設計者は、サーバーの熱暴走を恐れるがあまり、余裕のありすぎる空調設備の設計しがちです。

こうした縦割りによる省エネ性向上の壁を突き破ろうと、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、各分野の最新省エネ技術を結集した次世代モジュール型データセンターを構築しました。

注目すべきはサーバーの冷却方法です。従来はサーバー内にファンを内蔵し、CPUなどからの発熱を空気で冷やしていましたが、このサーバーでは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

サーバーに冷却塔を接続

 

し、水の蒸発熱を使ってサーバーの“粗熱”を冷やしているのです。

 

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次世代モジュール型グリーンデータセンターの構成図(資料:NEDO。以下同じ)

サーバー内の発熱部にはSOHKiが開発した「液冷ジャケット」を装着し、発生した熱の大部分を液体に吸収させます。その液体はラックからデータセンターモジュールの床下にある熱交換器まで流れていき、室外の冷却塔で冷やされた水と熱交換します。

つまり、サーバーの熱は間接的に冷却塔で蒸発熱として空気中に発散されるというわけなのです。

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既製品サーバー(左)と液冷ファンレスサーバー(右)の違い

液冷ジャケット採用のおかげで、サーバー内のファンは不要になります。そしてサーバーからモジュール内に排出されるわずかな熱は、産業技術総合研究所とNTTファシリティーズが開発した「グリーンユニット」という外気導入装置で屋外に排出されます。

グリーンユニットの内部には冷却塔のように水の蒸発熱で空気を冷やす「気化冷却器」と熱交換器、除湿加湿器が備えてあります。冬は外気とモジュール内の空気を熱交換することで冷却し、夏は外気を気化冷却器で冷却してモジュール内に送り込んで冷却する仕組みです。

ほとんどの外気条件下で、エアコンを使わずにサーバーを冷却できるので大幅な電力削減が可能です。

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グリーンユニットのイメージ図と空気の流れ

また、データセンターは停電などに備えて無停電電源装置として蓄電池を取り付ける必要があります。従来は直流の蓄電池を接続するため、交流と直流を4回も変換する必要があり、そのための電力損失が大きいという問題がありました。

そこでこのデータセンターでは380Vの直流電源供給システムを採用し、電源の変換段数を2弾に減らし、ロスを少なくしています。

さらに不要な電力消費を抑えるため、

 

アクセス減少時に電源オフ

 

をする運用方法を採用しました。

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アクセス負荷や節電要請に応じたデータセンター運用

こうした省エネ対策により、従来のモジュール型データセンター(総消費電力28kW)に比べて、次世代型は19.6kWと全消費電力の30%以上を削減することを目指しています。PUEの値は1.16と、1.0にかなり近づきました。

NEDOは次世代データセンターを茨城県つくば市で1年以上、実運用し、消費電力削減の効果を評価するとともに、運用のガイドライン開発やノウハウの蓄積などを進めるそうです。

この次世代型データセンターを収める建物も、長いダクトを使わずに建物のあちこちから外気にアクセスでき、冷却塔を設置できる構造にしておくとより省エネ効果も高まりそうですね。

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