管理人のイエイリです。
ベトナムでは日本からのODA(政府開発援助)によって、様々なインフラが整備されています。首都ハノイの中心部とノイバイ国際空港を結ぶ道路橋として建設中の世界最大級の斜張橋である「ニャッタン橋」(橋長:1500m、幅:35.6m)もその1つです。
この橋の橋桁を作っているのがハノイの東、約100kmのハイフォンにあるIHIインフラストラクチュア・アジア(IHI INFRASTRUCTURE ASIA。以下、IIA)です。
IHIが2009年に開設したこの工場の売りは、
日本と同等品質の構造物
をベトナムで製作できることなのです。
ベトナム・ハイフォン市にあるIIAの工場(左)と工場長の山本正恭さん(右)(写真:家入龍太。以下同じ) |
10月19日、工場を突撃取材したときは、まさにニャッタン橋の橋桁製作の真っ最中でした。橋桁の製作で欠かせないのが鋼板の正確な切断形状を出す原寸作業です。
以前は「原寸場」と呼ばれる大きなフロアを持つ建物で行われていましたが、いまやパソコンで行うのが当たり前となっています。IIAではJIPテクノサイエンスの「MASTERSON(マスターソン)」を日本人スタッフが使って原寸作業を行っています。
MASTERSONによる作業(左)と活気あふれる設計室(右) |
では、「日本同等品質」はどのように実現されているのか、鋼材の切断から溶接、塗装まで、工場のラインを山本工場長に見せていただきました。その様子を写真でご覧ください。
鋼材をコンピューター制御で切断するNC切断機 |
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鋼板の自動切断機 | |
バーナーで溶接ひずみをとる作業。日本と同じ方法です | |
塗装工程 | |
完成したニャッタン橋の橋桁。溶接ビードはなめらかで、塗装の仕上がりもピカピカです。日本同等品質に納得しました |
完成した橋桁は、発注者であるベトナム政府の検査を受けますが、その担当者も本州四国連絡橋公団のOBである日本人コンサルタントが務めており、ベトナムにいながら日本と同様の検査を行っているとのことです。日本同等品質になるわけですね。
ハイフォンの夏は暑く、溶接やガスバーナーを使う工場内の作業はなおさら大変です。そこで作業員の方々は、
ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、
マイ扇風機
を各自が持ち歩き、“一服の涼”を取りながら作業に励んでいるのです。たしかに、工場のあちこちでパーソナルタイプの扇風機を見かけました。
各自が「マイ扇風機」を持ち歩き、涼をとりながら作業しています |
マイ扇風機で頭も体もクールになると、生産性や品質がますます向上しそうですね。IIAの強さの秘密を見たような気がしました。
(訂正)
当初、ニャッタン橋の橋長を1280mとしておりましたが、1500mに訂正します。また記事中のキャプションで「自動溶接機」としていた個所を「自動切断機」に改めました。