無人機が飛ぶアンテナに!NICTが災害用無線中継システム開発
2013年3月25日

管理人のイエイリです。

災害などで既存の通信網が破壊され、周囲から孤立した被災地域ができた時、孤立地域との通信ネットワークを早急に復旧させる必要があります。

無線を使って復旧させる場合、孤立地域との距離が遠すぎたり、見通せなかったりした場合、1対のアンテナ同士では通信ができない場合もあります。

こんな時に、スピーディーに孤立地域との間に無線によるネットワークを構築できる画期的な方法が情報通信研究機構(NICT)により開発されました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

無人飛行機がアンテナ

 

となって無線を中継し、空中LANネットワークを構築するシステムなのです。

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無線中継を行う無人飛行機「PUMA-AE」(写真・資料:情報通信研究機構。以下同じ)

無線中継に使うのは、世界最先端の「Puma-AE」という小型無人飛行機で、GPS(全世界測位システム)受信機能や加速度センサ、ジャイロセンサーなどの位置・姿勢センサーを搭載し、あらかじめ設定された経路を自動的に飛行できます。

非常時にはこの無人飛行機に無線中継装置を搭載し、空中を旋回させます。すると飛行機での無線中継により、4~5km離れた地上の2地点間で通信が可能になるというわけです。

この飛行機を2機同時に飛行させて2機間で中継した場合に、さらに中継距離を2kmほど延ばすことが可能です。無人飛行機はバッテリーとモーターで飛行し、飛行時間は2時間、15kmの飛行ができますが最大通信時間はバッテリーの制約から1時間程度となっています。

飛行機の発進は手投げで行えるため滑走路はいりません。また地上局装置は三脚などを利用した軽量、簡易なものなので、車が使えない場所でも無人飛行機とともに手軽に持ち運べます。

この無線中継システムは、総務省平成23年度補正予算「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発」によって開発された物です。

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小型無人飛行機を活用した“無線中継システム”(2機中継の場合)

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地上局の構成

 

使用する小型無人飛行機の仕様
機体名 PUMA-AE(米国エアロバイロンメント社製)
翼長・機体重量 2.8 m, 5.9kg
ペイロード 0.5 kg
飛行時間・飛行距離 2-4時間、15km
耐風速 25ノット(13m/s)
最高飛行高度 5000 m(実証実験では青葉山周辺森林上空150~600mを飛行予定)
動力、運用方法 電動、手投げ発進、失速回収、GPSによる自律飛行、防水仕様
使用周波数 データリンク、制御リンク:2GHz帯 (いずれも実験局免許で運用)
その他 騒音は小(50m離れれば、ほぼ無音)

これまで、無線中継というと、中継用アンテナを支えるポールやタワーをどう設置するかということを考えがちでしたが、無線中継システムの小型化と無人飛行機の進化により、

 

タワー代わりに無人飛行機

 

を使えるようになったのは、画期的ですね。

ということは、これまでポールやタワーに設置してきたカメラやセンサーなども、無人飛行機を使うことで設置費用が安くなるかもしれませんね。

この無人飛行機を使った無線中継システムは、3月25日、26日に仙台で開催される「耐災害ICT研究シンポジウム及びデモンストレーション 災害に強い情報通信技術発表会 -つながる!こわれない!-」で、実際に1機または2機の飛行機を飛行させて無線中継するデモンストレーションが行われます。

東北大学の青葉山キャンパスの新キャンパス造成地を離着陸エリアとし、同キャンパスの上空を無人飛行機が旋回する予定です。お近くの方はぜひ、ご覧くださいね。

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3月25日、26日に東北大学で行われるデモンストレーションで使用する離着陸ポイント、定点旋回エリアと地上局の位置

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