現場の3Dプリンター活用例も!JACICが平成25年度のCIM報告書を公開
2014年5月22日

管理人のイエイリです。

2012年から日本の土木分野で導入が始まったCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)は、国土交通省をはじめとする関係機関が組織的に取り組んでいるため、活用が急速に進んでいるようです。

国交省の「CIM制度委員会」と連携して、CIM活用の技術的な課題を検討している日本建設情報総合センター(JACIC)の「CIM技術検討会」はこのほど、昨年度の活動をまとめた「平成25年度報告」(PDF)を公開しました。

JACICのウェブサイトから「平成25年度報告」がダウンロードできる

JACICのウェブサイトから「平成25年度報告」がダウンロードできる

全100ページに及ぶ大作で、CIMの理念から行政や地方自治体の取り組み、国際動向や技術動向、そして試行事業の報告など、幅広い視点からCIMの現状を総括しています。

まず、注目したいのが昨年度、土木学会が全国10カ所で行った「CIMに関する講演会」の来場者を対象としたアンケート結果です。CIMの知識については「内容までよく知っている」と「聞いたことがある」を含めて9割以上と高いポイントとなりました。

そして、CIMを導入するための課題として、第1位は

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

人材育成・教育

 

だったことがわかったのです。

CIMに関する講演会(全 10 会場) アンケート結果(資料:JACIC。以下同じ)

CIMに関する講演会(全 10 会場) アンケート結果(資料:JACIC。以下同じ)

わずかな差で「導入コスト(ソフト・ハード)」と続きました。これまで建築関係者を対象に行われたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)についての調査では、導入の課題として「コスト」が最も大きなものとして挙げられることがほとんどだったので、意外でした。

そのため、この報告書では「人材育成・研修を取り巻く状況」という節を設け、5社のCIM教育プログラム例を対象ソフトや期間などの具体例を挙げて紹介しています。

また、注目したいのは、施工段階でCIMを導入した建設会社から提供された7つの事例が紹介されていることです。

例えば大林組は「近畿自動車道紀勢線見草トンネル工事」で、トンネルデータや計測・品質データ、現況地形データを1つのCIMモデルに統合し、施工管理に有効活用しました。

さらに覆工が終わった段階で3Dレーザースキャナーなどによって現況データを計測し、維持管理に重要な情報となる「初期モデル」を作成・提供することを検討しているそうです。

大林組の「近畿自動車道紀勢線見草トンネル工事」。覆工完了時に3Dレーザースキャナーなどによる計測を行った

大林組の「近畿自動車道紀勢線見草トンネル工事」。覆工完了時に3Dレーザースキャナーなどによる計測を行った

安藤ハザマは「佐世保市北部浄水場(仮称)統合事業」で、維持管理性の向上を目的として構造物の埋設配管を3Dモデル化。また、大成建設は切り盛り土量約540万m3の「南山東部土地区画整理事業建設工事」で、施工形状や転圧回数、密度管理などの情報を「見える化」するためにCIMを導入しました。

安藤ハザマの「佐世保市北部浄水場(仮称)統合事業」

安藤ハザマの「佐世保市北部浄水場(仮称)統合事業」

大成建設の「南山東部土地区画整理事業建設工事」

大成建設の「南山東部土地区画整理事業建設工事」

このほか熊谷組は「八鹿日高道路三谷トンネル(北側)工事」で施工・維持管理の情報を一元化すするため、現場主体でCIMモデルを作成。清水建設は千葉県市川市で施工中の東京外かく環状道路「高谷IC改良その6工事」で水道管の切り回し検討や、コンクリートの品質情報や構造物の初期情報などの管理にCIMモデルの活用を行いました。

鹿島は「鶴田ダム増設減勢工工事」で、施工計画の立案や施工管理、発注者などとの協議資料としてCIMを活用しました。

熊谷組の「八鹿日高道路三谷トンネル(北側)工事」

熊谷組の「八鹿日高道路三谷トンネル(北側)工事」

清水建設の東京外かく環状道路「高谷IC改良その6工事」

清水建設の東京外かく環状道路「高谷IC改良その6工事」

鹿島の「鶴田ダム増設減勢工工事」

鹿島の「鶴田ダム増設減勢工工事」

ちょっと面白いなと思ったのは、前田建設工業が東京外かく環状道路の「矢切函渠その9工事」で行ったCIM活用の事例でした。既存の国道のすぐ横や直下を掘削して地下に堀割スリット構造のボックスカルバートを造る工事ですが、

 

3Dプリンターで現場模型

 

を作ったのです。

前田建設工業が3Dプリンターで作成した「矢切函渠その9工事」の現場模型

前田建設工業が3Dプリンターで作成した「矢切函渠その9工事」の現場模型

さらに報告書では、石川県小松市が昨年11月に「3D-CADステーション」を開設し、製造業出身の市長によるトップダウンのCIM導入が行われている例も詳しく紹介されています。

小松市の「3D-CADステーション」と設計成果の事例

小松市の「3D-CADステーション」と設計成果の事例

土木構造物は多種多様にわたり、一言で「CIM」と言っても扱う情報や活用目的、そして課題は千差万別です。CIM技術検討会「平成25年度報告」は、CIMの現状から今後の課題までを幅広い視点でスピーディーにまとめ、公開した点がすばらしいですね。

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