管理人のイエイリです。
年間に消費する一次エネルギーが年間トータルでゼロになる「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」が、出始めてきました。2013年には清水建設が日本初のZEBとして生長の家の「森の中のオフィス」を完成させ、2014年は大林組が同社の技術研究所本館テクノステーションのソースZEB化改修工事を行った例などがあります。
ただ、これまで造られたZEBは、エネルギー負荷の小さな低層建物だったり、広い敷地を生かして建物外で創ったエネルギーを使ったりとして、ゼロエネルギーを達成していました。敷地が狭い都市型のオフィスビルにはない好条件を備えていたのも事実です。
そこで大成建設は、都市型のビルでも建物自体の年間エネルギー収支をゼロにすることを目指し、横浜市戸塚区の同社技術センターにZEB実証棟(地上3階、地下1階、延べ床面積1277.32m2)を完成させました。
狭い敷地でZEBを実現するエネルギー戦略とは、一般ビルの年間消費エネルギーに比べて
ナ、ナ、ナ、ナント、
75%の超省エネ
と、25%分の創エネを実現するというものなのです。
ZEB実証棟では、新しいシステムの開発や、従来技術の効率的な組み合わせにより、徹底的な省エネルギーを図り、年間のエネルギー消費量を一般的なオフィスビルと比べて75%削減します。
その一方で、消費するエネルギーの残り約25%は、太陽光パネルによる創エネにより賄い、消費エネルギーと生成エネルギーの収支がゼロとなることを目指します。
ZEB実証棟に導入されたシステムには、大幅な省エネと快適性を両立する「超省エネ型タスク・アンビエント空調システム」があります。人がいる場所だけ空調の吹き出し口を開け、部屋全体は天井コンクリートスラブに埋め込んだ配管に冷水を循環させる放射空調を行います。
この冷水は、燃料電池の排熱温水の熱エネルギーを使って作られるそうですので、
排熱エネルギーの徹底利用
ぶりがうかがえますね。
また、照明エネルギーを節約するため、無線制御によって照明器具を1灯単位で調光制御できる「無線制御システム(T-Green Wireless)」も導入されました。
ほとんど人がいないオフィス全体に、煌々(こうこう)と照明が点灯されている風景をよく見かけますが、こうした無駄を省くとともに、さらに個別の調光によって光環境の快適性も両立させてワーカーの生産性を高めようという狙いが感じられます。
再生可能エネルギーによって創られた電力などを買う「カーボンオフセット」に頼らず、建物自身でゼロエネルギーを目指すという積極的なZEB化への挑戦が実現すれば、都市に太陽エネルギー革命が始まるきっかけになるかもしれません。今後の大成建設のZEBに期待したいです。