管理人のイエイリです。
英国・ロンドンで開催されたベントレー・システムズ主催のイベント「ザ・イヤー・イン・インフラストラクチャー2016(The Year in Infrastructure 2016)」は11月3日、幕を閉じました。
最終日の午前中も、今回のイベントで大きなテーマとなった、実際の構造物や地形を3Dモデル化する「リアリティー・モデリング」のセッションを2つ聴講しました。
米国・ペンシルベニア州立大学(愛称:ペンステート)建築工学科のジョン・メスナー(John Messner)教授は、約187万m2ある同大学のメインキャンパスの上空からセスナ機で写真撮影し、
ナ、ナ、ナ、ナント、
バーチャル・ペンステート
という3Dモデルを構築してしまったのです。
セスナ機の操縦席からカメラを構えて、2時間にわたり約2400枚の高解像度の写真を撮影し、その写真データを「ContextCapture」というソフトで処理し、3Dモデル化したものです。
同キャンパス内には947棟の建物があります。この建物に属性データを付けるため、GIS(地理情報システム)で構築した地図と3Dモデルをリンクさせたり、建物の中に各フロアの間取り図を入れたりして、様々な建物に関する情報をひも付けしました。
3Dモデルに様々なキャンパスの維持管理情報などをひも付けることにより、バーチャル・ペンステートを建物情報を一元管理するためのインターフェースとして活用することを目指しています。
また、ジョンズ・ホプキンス大学のコンサルタント、バディー・クリーブランド(A.B.”Buddy” Cleveland)氏は、空撮写真などから様々な構造物の3Dモデルを作成し、活用した事例を紹介しました。
その1つに、オーストラリアのアンテナ用タワーをドローンで空撮した写真から3Dモデル化した例を紹介しました。
細いトラス材が複雑に込み入ったタワーなどを写真から3Dモデル化すると、どうしても部材がゆがんだり、消えたりしがちです。
この例はタワーの周囲をドローンに丁寧に飛行させ、数多くの写真をもとに3Dモデル化したので、非常に精巧なモデルに仕上がっています。
日本では、国土交通省の「i-Construction」政策で、ドローンによる土工現場の空撮や3Dモデル化による土量計算、出来形管理などが行われています。
海外事例に比べると、日本のドローン活用は始まったばかりという感じもしますが、実は世界の中でもリアリティー・モデリング大国になりつつあることを実感させてくれるデータがありました。
空撮写真から3Dモデルを作る「ContextCapture」の販売本数を世界各国で比較すると
ナ、ナ、ナ、ナント、
日本がダントツに多い
ことが、ベントレー・システムズのグレッグ・ベントレーCEOのプレゼン資料から明らかになったのです。
今回のイベントの中でもメーンイベントである「BE Inspired」アワードのリアリティー・モデリング部門は、フィンランド・ヘルシンキ市が優勝しました。
同部門でノミネートされていた大林組・早稲田大学ペアの点群とBIMモデルによる工程把握システムは、残念ながら優勝は逃しましたが、1億円以上の規模のプロジェクトを相手に、よく健闘しました。
日本のリアリティー・モデリング技術は、モデリングの精度や活用する土木技術者の数から言っても、決して海外にひけをとらないレベルに達していると感じました。
こうした海外のコンテストに、日本の技術者もどんどん出ていき、世界と勝負する経験を積むのも大事ではないでしょうか。来年の日本勢の健闘に期待したいです。