AIで橋の揺れに先手!大林組が“強化学習”で制震装置を高性能化
2019年12月12日

管理人のイエイリです。

東京・清瀬にある大林組技術研究所の本館「テクノステーション」の内部には、スリムな歩道橋が架かっています。

大林組技術研究所本館「テクノステーション」の外観(写真:家入龍太)

大林組技術研究所本館「テクノステーション」の外観(写真:家入龍太)

内部に架かるスリムな歩道橋(以下の写真、資料:大林組)

内部に架かるスリムな歩道橋(以下の写真、資料:大林組)

この歩道橋の橋桁中央部には、

ナ、ナ、ナ、ナント、

AMDという制震装置

が埋め込まれているのです。

橋の中央部に埋め込まれたAMD

橋の中央部に埋め込まれたAMD

AMDの仕組み

AMDの仕組み

AMDとはアクティブ・マスダンパーの略です。センサーが人の歩行による揺れを感知したとき、動力によって重りを上下方向に動かし、橋の揺れを抑える装置です。

揺れを抑える性能は、時々刻々と変化する橋の揺れに対して、重りをどの方向にどれだけの力で動かすかにかかっています。

これまでは、振動の理論に基づいてセンサーの値から「制御則」と呼ばれる計算方法に基づいて、重りの動かし方を決定していましたが、最適な制御方法は明確になっていませんでした。

そこで大林組はLaboro.AI(本社:東京都中央区)と共同で、AI(人工知能)技術の1つである

強化学習

という方法で、AMDの制御機構を鍛えたところ、従来の制御方法よりも制震性能を大幅に向上させることができたのです。

強化学習の前(上)と後(下)の振動の時刻歴領域による比較。それぞれ下段が橋に与えた力、上段が橋の揺れを表している

強化学習の前(上)と後(下)の振動の時刻歴領域による比較。それぞれ下段が橋に与えた力、上段が橋の揺れを表している

かかとによる加振(左)と歩行による加振(右)による橋の振動を周波数領域で見たところ。4ヘルツあたりのもっと大きい揺れを抑えられることが確認できた

かかとによる加振(左)と歩行による加振(右)による橋の振動を周波数領域で見たところ。4ヘルツあたりのもっと大きい揺れを抑えられることが確認できた

強化学習はAMDに試行錯誤させることによって行いました。はじめはランダムな方向と大きさの力で重りを動かしますが、橋の揺れを抑えられたときにその力の出し方を学習します。

これを何度も繰り返していくうちに、徐々に橋の揺れを抑えるための重りの動かし方を学んでいくというわけです。

囲碁や将棋の世界で、AIが人間を打ち負かすほどの実力を身につけたのも、この強化学習によるものでした。しかし、建設業界をはじめ産業界で使われるAIでは、この手法はほとんど使われたことがありません。

つまり、AMDは時々刻々と変わる橋の振動を、AIによって先読みし、“先手”を打って抑える技を身につけたというわけですね。

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