管理人のイエイリです。
建設プロジェクトにBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用する機会が増えていますが、まだまだ多くの場合、業務の一部でBIMを使っただけという例が多いのが実情です。
ところが鹿島は、大阪市中央区で行ったオービック御堂筋ビル新築工事で、企画・設計から施工、そして運営・維持管理に至るまでの建設フェーズ全体で
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMによるデジタルツイン化
を実現したのです。これは日本初の取り組みです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
デジタルツインとは“デジタルの双子”という意味で、実物の建物をそっくりそのままBIMモデル化したものです。単なるデザイン案のBIMモデルとは違い、“実物ありき”のBIMモデルである点で重みが違います。
それに対して実物の建物の方は「フィジカルツイン」、つまり“物理的な双子”と呼ばれることもあります。
企画・設計フェーズのデジタルツインは、ビル風シミュレーションによる周辺環境への影響評価や、空調・配管設備などをひとまとまりの「モジュール」に分けた検討や設計、室内の気流シミュレーションなどに活用しました。
続く施工フェーズでは、設計段階で決定したモジュールを工場でプレハブ化する「モジュール・コンストラクション」や、工事プロセスのデジタル化や進捗(ちょく)管理、さらにはMR(複合現実)技術を活用したモジュールモデルと実際の施工状況の確認などを行いました。
さらには建物の完成後、運用・維持管理フェーズではグループ会社の鹿島建物総合管理(東京都新宿区)が運営するFMプラットフォームとBIMモデルを連携し、日常の点検業務で得られた情報や中央監視設備からの情報をFMプラットフォームに集積しました。
このプレスリリースが、新型コロナウイルスの緊急事態宣言がまだ解除されない昨日(2020年5月11日)に発表されたことは、偶然とはいえ、今後の現場運営に大きな意味を持つものと考えました。
というのは、デジタルツイン化した設計、施工、運用・維持管理にかかわる情報をクラウドシステムで共有し、モジュールコンストラクションで工場生産することにより、これまで現場で多数の人が集まって行ってきた業務を現場以外の場所に「オフサイト化」できるからです。
これは、新型コロナ後の現場で喫緊の課題となっている
現場の“3密防止”
に大きな効果を発揮するでしょう。
新型コロナ以前から、日本の建設業は今後、数十年間にわたって減り続ける生産年齢人口に対応するため、中・長期的な生産性向上が課題となっていました。
ところが今、それに加えて現場の「3密防止」や「ソーシャルディスタンスの確保」が、喫緊の課題として浮上しています。
BIMによるデジタルツイン化やプレハブ化を今、推進することで両方の課題解決につながりそうです。