管理人のイエイリです。
世界的な新型コロナウイルスの流行に伴い、建物の運用・維持管理では省エネルギーだけではなく、換気量や空気の質、そして建物を使っている人の情報までをリアルタイムに収集し、適切なフィードバックを行っていくことが求められています。
また、効率的な修繕やメンテナンスのためには、過去や現在のデータを生かした将来の予測も欠かせません。
ビルの運用・維持管理作業に求められるデータ処理は、もはや人間の能力をはるかに超えていると言っても過言ではありません。
そこで国際的な建設コンサルタント、アラップ(Arup。本社:ロンドン)は、建物の運用管理や制御、利用状況の把握などを一括で管理できるプラットフォーム「Neuron(ニューロン)」を開発しました。
その基本コンセプトは、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルとセンサーからのリアルタイム情報を組み合わせ、
ナ、ナ、ナ、ナント、
建物のデジタルツイン
によって維持管理を行おうというものなのです。(アラップの関連ウェブサイトはこちら)
Neuronは、建物の運用システムや空調システムからリアルタイムに送られてくるデータと、BIMモデルによって建物の状態をデータ化した「デジタルツイン(デジタルの双子)」をベースにしています。
このデジタルツインをAI(人工知能)によって分析することで、最適な空調・照明などの制御を行うだけでなく、将来の傾向分析やエネルギー需要予測、さらには故障の予測までを自動的に行うことができます。
ニューロンとは、人間の脳を構成する神経細胞を意味する言葉です。まさにデジタルツインを中心に、様々なシステムが「神経細胞」のように結合した建物管理プラットフォームとなっていますね。
このNeuronは、香港初の“データドリブン”(データ駆動アプローチ)によるAI対応高層オフィスビル「One Taikoo Place」に導入されたほか、北京オリンピックで使われた「北京国家水泳センター(ウオーターキューブ)」に導入され、最大25%のエネルギーを削減しました。
そして、このシステムの“ニューロン”は常に進化しています。
新型コロナウイルスの世界的な流行を受けて、One Taikoo Placeでは、額の温度を効率的に測定できる
赤外線カメラ
のデータとNeuronを連動させ、体温が高い人がいる場所を発見できるようにしました。
BIMやデジタルツイン、AIが導入されると、地味なイメージだった建物の運用・維持管理の仕事は、時代の最先端を行くハイテク産業へと変身しそうですね。
そして、これまでになかった“ニューロン”を開発するビジネスも生む、エコシステムへと進化していきそうです。