管理人のイエイリです。
建設工事が終盤に近づくと、元請けの建設会社は、発注者に提出する竣工図書の準備に追われます。
竣工図書には機器のマニュアルから工事保証書、完成図面までが含まれ、下請け会社から集めるものも多いため、工事の仕様書通りに竣工図書をそろえるのは、並大抵の苦労ではありません。
米国バージニア州ハーントンに本拠を構えるスタートアップ企業、Pypeは、AI(人工知能)によって、竣工図書を楽に作成するクラウドサービス「Closeout」を開発し、ARCOやWEBCOR、DPR Constructionといった大手建設会社などに展開してきました。
同社は2020年7月22日、ある企業に買収されたことがあきらかになりました。その企業とは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
米国オートデスク本社
だったのです。(米国オートデスクの英文プレスリリースはこちら)
オートデスクと言えば、Revit、Civil 3DなどのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトや、BIM 360などのクラウドサービスなど、エンジニアリング関係のソリューションを展開してきました。
同社が今回、竣工図書作成という事務系の業務に対応したソリューションに進出したことで、BIMのワークフローがさらに拡張されそうですね。
では、「Closeout」とは、どんなクラウドサービスなのかが気になったので、Pypeのウェブサイトで公開されているビデオを見てみました。
まずは工事の仕様書のPDFファイルをクラウドにアップします。するとAIが仕様書を解析して、必要な竣工図書の一覧表を作ります。
この一覧表はクラウドと連動しており、それぞれの書類の提出状況や承認状況などがリアルタイムに反映されます。
各サブコンには、工事の進捗に伴って適切な時期に書類提出を促すアラートが自動送信されます。図書に日付や署名抜けなどの不備があった場合には、システムを通じてサブコンに修正を依頼することもできます。
そして、最終的には、すべてのファイルがリンクされたPDF版の竣工図書を書き出すことができます。
オートデスクはこの買収に先立ち、ウェブベースの3Dソリューション企業「Assemble」、応札やリスク管理のソリューション企業「BuildingConnected」、プロジェクトの情報共有ソリューション企業「PlanGrid」の3社も、1100億円以上で買収しています。
これら3社に今回のPypeを加えて、
“Construction Cloud”
というオートデスクのクラウドサービスに統合する予定です。
「性善説」に立った日本の工事契約書が簡素なのに比べて、欧米の契約書や工事仕様書は昔から分厚く、これらを数日間かけて解読し、ミスを見つけて“設計変更”などの増収につなぐための専門家もいると言われています。
これからは分厚い契約書などもAIで分析して、リスク要因を事前に発見し、応札するかどうかをスピーディーに判断する時代になってきそうですね。