管理人のイエイリです。
日本建設業連合会(日建連)の建築生産委員会 IT推進部会 BIM専門部会では、施工段階でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用を推進するため、2014年に「施工BIMのスタイル」という冊子を刊行しました。
以来、2016年と2018年には各社の具体的な施工BIMの活用事例をまとめた「事例集」を刊行し、2017年にはこれからBIMを始める企業や団体向けに「施工BIMのすすめ」を刊行してきました。
そして2021年3月には、「施工BIMのスタイル 施工段階におけるBIMのワークフローに関する手引き2020」を刊行し、4月から頒布を開始することになりました。
最新版の「施工BIMのスタイル」を手にとってまず驚いたのは、そのボリュームです。2014年版はA判で132ページでしたが、最新版は
ナ、ナ、ナ、ナント、
256ページとほぼ倍増
し、その厚みは12mmにも及んでいるのです。(日建連ウェブサイトの刊行物紹介コーナーはこちら)
日建連のBIMに対する取り組みを集大成しただけあって、その内容は非常に濃く、具体的で、未来の建設業予測まで及んでいます。
例えば、「施工BIMのロードマップ」では2024年までに設計、施工のほか維持管理までBIMデータの活用が始まる、2025年以降は建設業の生産性が2割向上すると予測しています。
また、日建連 建築生産委員会の参加企業での施工BIM導入率は2015年は60%、18年は76%でしたが、2021年以降は100%になると見込んでいます。
施工BIMと一言で言っても、これまでは図面や施工計画を担当する「工務部門」での活用が中心でしたが、今後はBIMモデルで専門工事会社や工場との連携を進めることで生産性を高める方法や具体例にも踏み込んでいます。
現場でのBIM活用を進めて行くためのワークフローや組織、人材教育、会議の進め方など、実務面の解説も充実しています。BIMマネージャーとBIMコーディネーター、BIMモデラーの役割分担などの違いなどは、施工BIMを実践するうえで大変参考になりそうです。
このほか、参考になるのは第4章の「目的別ワークフローのモデルケース」です。ここでは、建設プロセス別の施工計画の内容や作り方、BIMモデル合意の仕方、数量計算の活用などのほか、
ICT建築土工やMR
など、土木分野で進んできた「i-Construction」のICT土工技術や、HoloLensなどのMR(複合現実)デバイスと施工BIMとの連携も解説されています。
初期段階のBIMモデルに、設備を前もって配置しておく「BIMプロット」という、これまであまりなじみのなかった手法も紹介されており、大変、参考になります。
このように「施工BIMのスタイル 施工段階におけるBIMのワークフローに関する手引き2020」は、施工BIMをどのように実践したらよいのかが、とてもわかりやすく書かれています。
同時にBIMデータの連携を通して、ゼネコン、専門工事業、工場のお互いの仕事内容を理解する上でも参考になります。
これだけ充実した内容であるにもかかわらず、お値段は日建連会員企業以外の場合、3000円(税込み、送料別)と大変リーズナブルです。建設会社だけでなく、建築設計事務所の方も買っておいて損はないですよ。