管理人のイエイリです。
建物の大きさは、基本設計に先立つ企画段階で行われる「ボリューム設計」で決まります。
ボリューム設計では、建設場所の建ぺい率や容積率、斜線制限や日影規制などに基づき、「鳥かご図」と呼ばれる建築規制範囲を表示し、建築可能な建物の最大ボリュームを検討します。
この作業は、設計者の知識や経験などの力量に左右されるため、担当者によって成果品作成の期間や品質が大きく変わることがありました。
そこで安藤ハザマは、このボリューム設計にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のほか、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIやデータベースを活用
し、自動化する構想をまとめ、現在、システムを開発中なのです。(安藤ハザマのプレスリリースはこちら)
開発中のシステムは、設計者が敷地や建物の基本情報を入力し、いくつかの簡単な追加条件を入力することで、ボリュームプランと概算コストがセットで、「企画ボリューム案」として作成できるものです。
システムは大きく3つのプロセスに分かれており、(1)ボリューム形成プロセス、(2)プラン形成プロセス、(3)コスト算定プロセスからなります。
(1)ボリューム形成プロセスでは、ウェブサイト上に公開されている法令情報に都市計画情報を補足して「鳥かご図」を作ります。建築形態のタイプを選択すると、建築可能な最大のボリュームを自動的に生成します。
(2)プラン形成プロセスでは、過去物件のデータベースから類似物件を複数表示します。設計者がその中の1つを選ぶと、その案件の規則に従って配置やゾーニングを自動作成します。
現在、(1)と(2)から企画ボリューム案を提示する部分までは、限られた条件・用途の下で開発済みです。
これらの開発は、武蔵野大学データサイエンス学部の武藤佳恭教授(慶應義塾大学名誉教授)、野原ホールディングス、GH Advancers(本社:東京都港区)と共同で行いました。冒頭のイメージ図はその成果です。
そして現在、開発中の(3)コスト算定プロセスは、企画ボリューム案の情報から、過去物件の躯体、仕上げ、設備の歩掛かりデータを検索し、統計的手法によって概算コストを算定します。一部の用途でコスト算定を試行するところまで開発が進んでいます。
このシステムの完成後は、経験の浅い設計者が4~5日要していたボリュームプラン作成を、概算コスト算定まで含めて、
1日で自動作成
できることを目指しています。つまり、ボリューム設計の生産性が約5倍になるというわけですね。
今後、このシステムは適用条件を広げながら妥当性の検証を行い、2022年度中に実物件に導入することを目指しています。さらに将来は、基本設計段階で上部躯体の部材断面を自動的に査定し、数量積算できるようにします。
こうした機械的な作業はAIやデータベース、自動化されたBIMに任せ、設計者自身はデザインなど、よりワクワクした仕事に集中していくのが、今後の働き方改革になりそうです。