大林組がトンネル作業を自動記録! 騒音からAIで作業内容を判断
2022年2月22日

管理人のイエイリです。

発破で掘削を行う山岳トンネルの工事は、削孔→装薬→発破→(土砂の)ずり出し→支保工建て込み→コンクリート吹き付け→ロックボルト打設といった、サイクル工程を何度も繰り返しながら進んでいきます。

また、機械の故障やミキサー車の到着遅れといった作業停止時間(ダウンタイム)もあります。

山岳トンネル工事の生産性向上とは、サイクル工程とダウンタイムを最小化することです。

その時間的内訳を記録する必要がありますが、現場管理者が掘削最前線の「切羽」付近で、ストップウオッチやノートで計測し続けるのは不可能でした。

この計測作業を自動化するため、大林組はソウル大学と共同で、「CyclEye(サイクライ)」というシステムを開発しました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

現場映像をAIに認識

させて、建設機械の配置や各作業に要した時間を自動的に把握することができるのです。

画像認識用のAIで、切羽付近の作業に使われている建機や車両などを把握した例(以下の写真、資料:大林組)

建設機械の位置関係を把握した例

画像認識用のAIでは、削孔、装薬、ロックボルト打設作業で、建設機械の「本体」「アーム」「作業員が乗るマンケージ」の位置関係を分析して、作業内容を識別します。

しかし、物体同士が重なってしまうと、AIは物体を認識できません。

そこで、作業内容を知るもうひとつの方法として導入されたのが、作業時のエンジン音などの

工事騒音をAIに認識

させる技術です。

工事騒音の波形を、周波数ごとの強度に変換した「スペクトログラム」によって見える化し、それをAIによる音声認識技術によって作業内容を推定するのです。

「スペクトログラム」によって、作業内容を推定するイメージ

このシステムでは、画像と騒音の両方を組み合わせて判断する「マルチモーダルAI」によって、作業内容の推定精度を上げています。

このシステムによって、各サイクルタイムやダウンタイムを自動的に計測し、図表で見える化できるようになりました。

例えば、ある日のサイクルタイムを、作業班ごとに円グラフ化して比較することができます。このグラフから反省点を考え、PDCAを回すことで、生産性は徐々に上がっていきそうですね。また、努力の成果が目に見えるので、作業員のモチベーションも上がりそうです。

ある日のA班とB班の作業内容を比較したイメージ

この作業記録から、トンネル掘削作業によるCO2排出量や、ずり出し量の推定も行えるほか、トンネル建設機械の位置データを自律運転化の基礎データとしても活用できそうです。

今回のシステムは市販のクラウドカメラとマルチモーダルAIで構成されているため、低コストで導入できるとのことです。AIというと、高価なイメージがありましたが、かなり身近な施工管理ツールになってきたようですね。

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