管理人のイエイリです。
ダムの水門操作はこれまで、長年の経験と直感、そして決断力が求められる「KKD(経験・勘・度胸)」がモノを言う世界でした。
しかし、時代の進化とともにダムに流入する雨水の量や時期などのデータ精度が上がり、ダムの水門操作も「KKD」から「データドリブン」へと変わりつつあるようです。
北陸電力とJFEエンジニアリングは、2022年10月19日、両者が2017年度から開発を進めてきた「ダム最適運用システム」を、神通川水系の浅井田ダムなど、5つのダムで運用を開始したことを発表しました。
ダム湖に流入する水量予測と、早期放流や発電の水門操作を
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIで制御
することにより、ムダな放流を減らし、発電量を増やせるシステムなのです。(北陸電力のプレスリリースはこちら)
「ダム最適運用システム」は、ダムに流れてくる水の量をAI(人工知能)で予測する「流入量予測AI」と、ダムの放流操作などを提案する「ダム最適運用AI」で構成されています。
「流入量予測AI」は、過去の降雨データや流入量実績をAIに学習させて、流量予測に必要なパラメーターの分析・評価をAIが行いました。33時間後までの降雨量や流入量を予測できます。
「ダム最適運用AI」は、河川の維持流量などダムの運用規則を守りながら、洪水吐きゲート(水門)を操作しつつ、発電量が最大になるような操作を提案します。
流入が止まるタイミングも精度よく判断しながら、いち早くダム水位を回復させるためのゲート操作を提案します。
流入量予測AI、最適運用AIともに、JFEエンジニアリングが独自開発したAIエンジン「WinmuSe」を活用しました。
このシステムはまず、浅井田ダムで両AIシステムの適用や開発が始まり、他のダムには「ダム最適運用AI」を順次、追加するという順番で構築されました。
開発に当たっては、ダムや発電所運用のノウハウを北陸電力が、AI技術をJFEエンジニアリングがそれぞれ提供し、精度を向上させていきました。

最初に「流入量予測AI」が適用され、「ダム最適運用AI」が開発された浅井田ダム(写真:Qurren、Wikimediaより)
これらのAIの提案に沿って、ダム管理者がゲート操作を行うと、水系全体で
発電量が1%程度増加
することが見込まれています。
このほか、ダムの早期放流による洪水低減などにも活用できるので、治水分野でも効果が期待できます。
台風などの洪水に備えて、事前に放流したのはよかったものの、肝心の台風が空振りに終わり、貯水量が足りなくなったというニュースもよく聞きます。
一方、土木関係者の間では「3つのダムがあふれるギリギリだっだが、ダム管理者同士が連絡を取り合って、なんとか堤防の決壊を防いだ」など、緊迫感ある裏話を聞くこともあります。
ダム分野にAIが普及していくと、ダム操作の成功要因も「KKDからデータドリブンへ」と変わっていきそうですね。