管理人のイエイリです。
建設業の生産性向上のため、「頭脳労働はAI(人工知能)に」という動きが活発化しています。
そんな中、海洋工事に強い東洋建設は、AIを活用した現場の安全管理システムを続々と開発しています。
その1つが、工事海域を航行するタンカーや貨物船など、一般船舶の将来の進路を予測する「AI長期進路予測システム」です。
富士通が開発した船舶位置予測のAI技術に、港ごとに船の動きを記録した過去のAIS(船舶自動情報識別装置)データを「教師データ」として機械学習させたシステムです。
これを使うと、船舶の進路を
ナ、ナ、ナ、ナント、
台風進路の予報円
のように、60分後まで予測できるのです。(東洋建設のプレスリリースはこちら)
これまで同社には、「みはりちゃん」というシステムがあり、AISや船舶レーダー、GNSS(全地球測位システム)のデータなどから、工事海域周辺にいる一般船舶をリアルタイムに把握していました。
そして船舶の進行方向と速度から、将来の進路を予測していましたが、10分後までの進路を直線ベクトルで表示するにとどまっていました。
今回、開発されたAI長期針路予測システムによって、船の進行方向や速度だけでなく、地形や航路などの港湾形状も加味して、曲線的な進路予測も可能になりました。
そのため、工事の作業船が、カーブしながら接近してくる一般船舶などをより早く予測できるので、安全に航行できます。
今後、主要港でのAISデータを学習させてこのシステムを全国的に展開を図ります。また、AISを搭載していない船舶の動きも、レーダー情報を学習させることで、すべての船舶の針路予測ができるよう開発を進めていきます。
東洋建設はこのほか、AIを使った「クレーン作業安全支援システム」を、リコーインダストリアルソリューション(本社:東京都大田区。以下、RINS)と共同開発しました。
移動式クレーンのブーム先端に、RINS製の
小型AIステレオカメラ
を取り付け、吊り荷と作業員が接近したとき、クレーンオペレーターに警報を発するするものです。(リコーインダストリアルソリューションのプレスリリースはこちら)
クレーンに取り付けたステレオカメラからによって、吊り荷や周辺の作業員の位置や高さを検出・追尾することができます。オペレーターも運転席から目視できない部分ところでも、映像によって確認できるので安心です。
このシステムで「危険」と判定されると、判定前後の作業の動画がクラウドに自動的に保存されます。そのため、安全管理者はこの動画を確認することにより、危険作業を効率的にチェックし、今後のKY活動などに生かすことができます。
東洋建設はこのシステムに、海上工事での消波ブロックの設置や鋼管杭の打設、ケーソン製作作業を学習させ、動作検証を行った結果、安全性が向上することを確認しました。今後は建機による自動化施工にも応用し、改良していく方針です。
なお、このシステムは国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)にも登録されており、NETIS番号は「QS-220019-A」です。