管理人のイエイリです。
港湾の水深を維持する工事などで使われるグラブ浚渫は、海中にクレーンでグラブバケットを投入して掘削した海底の土砂を、土運船に積み込みます。
その際、土運船が安定するように船倉部にはバランスよく土砂を積み込む必要があります。
しかし、船倉部には水面ができて空いている場所が分かりにくいので、これまでは船倉わきにいる合図者が、土砂の積み込み状況から積み込み位置を判断し、浚渫船のクレーンオペレーターに伝えていました。
これを積み込みのたびに行うので、手間ひまのかかる作業でした。
そこで東洋建設は富士通と共同で、積み込み作業を支援するシステム「AI Loading Navi」を開発しました。
土運船の船倉部をカメラでリアルに撮影した映像から、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIが積み込み位置
を自動的に判断し、合図者やオペレーターを助けてくれるのです。(東洋建設のプレスリリースはこちら)
このシステムは、グラブ浚渫中の土運船の映像をAI(人工知能)がリアルタイムに処理し、土砂、水面、壁を画素単位で識別し、区画ごとの土砂割合から積み込み状況を定量に判別します。
また、船倉が満杯になったときは、GNSS(全地球測位衛星システム)で土運船の喫水線の高さを計測し、判断します。
これらの情報を、オペレーターと合図者が共有することで、両者間の連絡や確認による
手待ち時間が短縮
されます。
合図者が積み込み場所に近づいて確認する作業も減るので、作業の安全性も向上します。
こうした繰り返し作業の間に潜む、ミクロな「手待ちのムダ」を短縮するという生産性向上策にも注目していきたいですね。
東洋建設では今後、この技術をグラブ浚渫船や土運船の自動化や自律化に向けて開発を進めていく予定です。
このAIシステム開発には、過去2年分の積み込み画像を教師データとして使用したとのことです。ベテランの判断に基づく作業を記録した、過去の映像は、AI開発にとっても貴重な資料になりそうです。