管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事では、断層や破砕帯など岩盤が弱い区間を掘削するとき、前もってボルトや鋼管を打設する際に、急結性の薬液を地盤に注入して固める「薬液注入」を行うことがあります。
薬液注入を行う時、地山内に亀裂や空洞があり、ゆるい岩盤の時は、注入した薬液が抜けてしまい、岩盤にしっかりとしみ込まない場合もあります。
これまでは薬液が岩盤内にどのような範囲にしみ込んでいるのか、抜けている部分はどこかを判断するのに、注入時の圧力や注入量などのグラフから、ベテラン技術者が頭の中で想像するしかありませんでした。
この問題を解決するため、西松建設はカテックス(本社:愛知県名古屋市)と共同で、薬注結果を定量的に評価できる「GroutViz」というシステムを開発しました。
薬液注入後の岩盤状態について、
ナ、ナ、ナ、ナント、
トンネル全体を3Dで
見られるようにしたのです。(西松建設のプレスリリースはこちら)
このシステムは、注入装置で記録した注入率、注入圧、注入量となどのデータを専用の解析ソフトで読み込み、注入データの3D可視化や、「逆距離加重法」などの空間データ補間機能によって岩盤への浸透傾向を分析できます。
その結果、注入率の値が高い部分では、亀裂が発達していると推定できるので、掘削時に岩が落下する
「肌落ち」を事前に予測
したり、トンネル内面を支える支保工の間隔などを見直したりできます。
また、これまではバラバラだった注入データを1つの3Dモデルとして可視化することで、注入状況の整理や、今後の注入計画に活用できるようになりました。
このシステムを西松建設が施工中のトンネルに導入した結果、注入データは実際の地質とほぼ同様の傾向を示しており、岩盤の評価に有効であることがわかりました。
西松建設は、掘削作業用の重機「ドリルジャンボ」による発破用の削孔データから地山性状を3Dで定量的に把握する「DRISS-3D」というシステムも既に開発しています。(詳しくは、2022年2月3日付の当ブログ参照)
今回、開発した「GroutViz」と「DRISS-3D」を合わせて運用することで、岩盤性状の予測と検証が繰り返して行えるので、山岳トンネル工事はますます「データドリブン」になっていきそうですね。