西松建設がトンネル工事の薬液注入結果を3D化! 「GroutViz」で施工の要注意箇所がわかる
2024年10月25日

管理人のイエイリです。

山岳トンネル工事では、断層や破砕帯など岩盤が弱い区間を掘削するとき、前もってボルトや鋼管を打設する際に、急結性の薬液を地盤に注入して固める「薬液注入」を行うことがあります。

山岳トンネル現場での薬液注入作業(左)と薬液の圧力や注入量などを管理する装置(右)(以下の写真、資料:西松建設)

山岳トンネル現場での薬液注入作業(左)と薬液の圧力や注入量などを管理する装置(右)(以下の写真、資料:西松建設)

薬液注入を行う時、地山内に亀裂や空洞があり、ゆるい岩盤の時は、注入した薬液が抜けてしまい、岩盤にしっかりとしみ込まない場合もあります。

これまでは薬液が岩盤内にどのような範囲にしみ込んでいるのか、抜けている部分はどこかを判断するのに、注入時の圧力や注入量などのグラフから、ベテラン技術者が頭の中で想像するしかありませんでした。

この問題を解決するため、西松建設カテックス(本社:愛知県名古屋市)と共同で、薬注結果を定量的に評価できる「GroutViz(グラウトビズ)」というシステムを開発しました。

薬液注入後の岩盤状態について、

ナ、ナ、ナ、ナント、

トンネル全体を3Dで

見られるようにしたのです。(西松建設のプレスリリースはこちら

注入管データの3D表示(左)と、岩盤への注入状況を3D表示(右)したもの

注入管データの3D表示(左)と、岩盤への注入状況を3D表示(右)したもの

このシステムは、注入装置で記録した注入率、注入圧、注入量となどのデータを専用の解析ソフトで読み込み、注入データの3D可視化や、「逆距離加重法」などの空間データ補間機能によって岩盤への浸透傾向を分析できます。

その結果、注入率の値が高い部分では、亀裂が発達していると推定できるので、掘削時に岩が落下する

「肌落ち」を事前に予測

したり、トンネル内面を支える支保工の間隔などを見直したりできます。

また、これまではバラバラだった注入データを1つの3Dモデルとして可視化することで、注入状況の整理や、今後の注入計画に活用できるようになりました。

このシステムを西松建設が施工中のトンネルに導入した結果、注入データは実際の地質とほぼ同様の傾向を示しており、岩盤の評価に有効であることがわかりました。

実際のトンネル現場での導入結果。注入量が多い部分は岩盤がもろい部分と一致していた

実際のトンネル現場での導入結果。注入量が多い部分は岩盤がもろい部分と一致していた

西松建設は、掘削作業用の重機「ドリルジャンボ」による発破用の削孔データから地山性状を3Dで定量的に把握する「DRISS-3D」というシステムも既に開発しています。(詳しくは、2022年2月3日付の当ブログ参照

ドリルジャンボによる掘削データから岩盤の強度を3D化する「DRISS-3D」

ドリルジャンボによる掘削データから岩盤の強度を3D化する「DRISS-3D」

今回、開発した「GroutViz」と「DRISS-3D」を合わせて運用することで、岩盤性状の予測と検証が繰り返して行えるので、山岳トンネル工事はますます「データドリブン」になっていきそうですね。

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