管理人のイエイリです。
道路インフラの維持管理は、点検員が道路を移動しながら目視で異常を発見、記録していました。人間による点検は、舗装の異常や落下物、植栽のはみ出しなどを総合的に発見できる半面、担当者によって点検結果や信頼性がばらつく、人手がかかるなどの課題もありました。
一方、AI(人工知能)による検査は、効率的で、担当者による結果のばらつきがないというのがメリットですが、大量の教師データが必要となる、学習された特定の異常しか発見できない、網羅的な経年変化を把握できない、という問題もありました。
そこで燈(本社:東京都文京区)とインフロニア・ホールディングス(本社:東京都千代田区)は、両者の“いいとこどり”をした「AIによる道路構造物点検システム」を開発しました。
車にスマートフォンを取りつけて走行しながらビデオ撮影するだけで、舗装の異常から道路落下物、植栽の建築限界からのはみ出し、ガードレールの変形・損傷まで、様々な道路の異常を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
リアルタイムに検知
できるのです。(燈のプレスリリースはこちら)
驚くべきことに、これらの異常は「教師データなし」で発見されたものです。さらに差分検知AIによって、損傷の経時変化を計測することもできます。
●このシステムの主な検出対象と適用AI技術など
主な検出対象 | 適用AI技術 | 判定方法・メリット |
---|---|---|
ひび割れ、ポットホール、カラー舗装・区画線の薄れ | 異常に関する教師データなしでの異常検知技術 | 教師データなしで新規損傷の未検出を抑制。 ほぼリアルタイムで舗装損傷を検出し、走行安全確保・維持管理費用抑制に貢献。 |
ガードレール、電柱、標識の損傷 | コンテキスト理解が可能な画像認識技術 | 変形などの通常状態と異なるものを検出できる。 |
落下物、建築限界内に侵入した物体(植栽、電線のゆるみ、標識・電柱の折れ曲がりなど) | 指定エリアへの侵入検知技術 | 道路空間に侵入した物体を検出。 ほぼリアルタイムで検出可能なため、安全な走行空間を確保できる。 |
記録した動画データや異常検出データを元に、必要な区間については、
3Dデジタルツイン
を構築することが可能です。
必要な箇所を見たいときに3D点群データに変換してデジタルツイン化できるため、クラウドのデータ容量は従来の100分の1程度で済みます。
動画データを取得するたびにデジタルツイン化しておくと、時系列や災害前後などでの構造物の変状を比較できます。
損傷箇所をデジタルツイン化しておくことで、遠隔による点検や補修設計、工事などの一連の維持管理業務が可能になるというメリットもあります。
このシステムは2025年夏を目標に、自治体への提供や導入を本格化させる予定です。スマホとAIでこれだけの幅広い点検ができれば、人手やリソースが不足する地方自治体の道路管理が様変わりしていきそうですね。