鹿島が道路橋の床版3Dモデルを自動作成! 更新工事の設計時間を10分の1に短縮
2025年3月4日

管理人のイエイリです。

道路橋は一見、単純な形をしていますが、地形によって道路のカーブや縦横断勾配が微妙に変わるためミクロで見るととても複雑な形をしています。

路面を支える床版が老朽化し、取り替える工事を行うとなれば、現状の橋にピッタリと合い、しかも部材同士が干渉しないように床版を設計・製作し、現場に設置しなければいけません。

そのため、道路橋の床版取り換え工事では、新たに設置するプレキャストPC床版の設計作業において、現場とのすり合わせが必要なため、膨大な時間を要していました。

道路橋の床版取り替え工事のイメージ(以下の写真、資料:鹿島)

道路橋の床版取り替え工事のイメージ(以下の写真、資料:鹿島)

プレキャストPC床版の3Dモデルイメージ

プレキャストPC床版の3Dモデルイメージ

この設計作業を省力化するため、鹿島は画期的なシステムを開発しました。

道路線形の座標や長さ、プレキャスト床版の鉄筋径やピッチなどの主要データを数値で入力するだけで、

ナ、ナ、ナ、ナント、

床版3Dモデルを自動作成

してくれるのです。

自動作成されたプレキャストPC床版の3Dモデル

自動作成されたプレキャストPC床版の3Dモデル

自動生成された配筋の3Dモデル

自動生成された配筋の3Dモデル

この「プレキャストPC床版の3Dモデル自動生成システム」は、数式によって3Dモデルを生成する「パラメトリックモデリング」機能を持つダッソー・システムズの「3DEXPERIENCE CATIA on the cloud」を活用して開発しました。

設計条件や数値情報などの主要なパラメータデータを入力すると、システム化された設計仕様やノウハウに基づいて床版の3Dモデル化を行います。

例えば、道路線形や床版厚などのデータに基づき、橋梁の橋面や床版の自動割り付けを行うほか、鉄筋同士が干渉しないように配筋の3Dモデルを自動作成します。

さらに床版1枚ごとに、2Dの図面データや数量算出のための構造寸法表を自動出力できます。

3Dモデルによって設計するので、床版を載せる鋼桁との干渉チェックも、2D図面で行う場合と比べ、より効率的に行えます。

このシステムを、大阪府泉南市~和歌山市間で鹿島JVが施工する「阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋ほか16橋橋梁更新工事(設計業務その1)」(発注者:西日本高速道路関西支社)に使用した結果、これまで熟練のCADオペレーターが手作業で行っていた繰り返し検討の時間が、

10分の1程度に短縮

されました。

床版3Dモデルの“副産物”として、橋梁のBIM/CIMモデルが同時に得られるので施工方法の検討や発注者との協議に使えるほか、施工前の現場を3D測量した点群データと重ねて差分解析を行うことで、現況と設計のずれを瞬時に把握し、設計を微調整することも可能になります。

鋼桁の3Dモデルと点群データを重ねて差分解析するイメージ。設計を現況に合わせて微修正できる

鋼桁の3Dモデルと点群データを重ねて差分解析するイメージ。設計を現況に合わせて微修正できる

鹿島はこのシステムを複雑な道路線形を持つ橋梁や、プレキャストPC床版の製作や架設計画に活用するとともに、同社の「スマート床版更新(SDR)システム」とも連携させる計画です。

パラメトリックデザインによる設計のオートメーション化は、現場とのすり合わせが必要な設計業務の生産性向上に大きく貢献しそうですね。

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