大林組が新丸山ダム現場のケーブルクレーンを自動運転化! ローカル5G回線の選定が成功の決め手に
2025年4月23日

管理人のイエイリです。

大林組が岐阜県内で施工中の新丸山ダム現場では、施工計画から施工、品質管理にわたって、同社が取り組む建設DX(デジタルトランスフォーメーション)が集大成されています。

2023年12月にはバックホーやブルドーザー、ダンプトラックなど10台の重機を自動・自律運転化し、1人の施工管理によって盛り土を施工する実証実験にも成功しました。(2024年4月22日の当ブログ参照

これらの自動化を支えているのが、「ローカル5G」という通信システムです。携帯電話でも最近は「5G」と表示される地域がメジャーになってきましたが、この高速通信システムの基地局を現場専用に作り、Wi-Fiのように使っているのです。

新丸山ダムの完成イメージとコンクリート打設用ケーブルクレーンのCG(以下の資料、写真:大林組)

新丸山ダムの完成イメージとコンクリート打設用ケーブルクレーンのCG(以下の資料、写真:大林組)

この現場では、巨大なダム堤体を施工するため「自律型コンクリート打設システム」の確立に向けた取り組みも始まっています。

そこで着手したのは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

ケーブルクレーンの自動化

なのです。(大林組のプレスリリースはこちら

ケーブルクレーンによるコンクリートの運搬作業

ケーブルクレーンによるコンクリートの運搬作業

このケーブルクレーンは、ダムの両岸にロープウェーのようなワイヤロープをかけ渡し、コンクリートのバケットを空中移動させてコンクリート打設地点まで運ぶものです。

このクレーンの運転で難しいのは、バケットの動き出しや停止の際には振り子のような揺れが発生することです。

これまでは現場にいる合図者と、ベテランのオペレーターが無線で交信しながら、絶妙なクレーンさばきでこの揺れを止めていましたが、技術者の高齢化によってこうした技能を持った人も少なくなっています。

そこで大林組は、熟練者でなくてもケーブルクレーンの運転を行えるようにするため、フックやトロリーに無線端末を設置して、揺動を瞬時に検知し、自動で抑制するシステムを開発しました。

また、クレーンのフックにはカメラが取り付けられており、撮影した4K映像が監視室にリアルタイムに伝送され、自動・自律運転における安全確保や監視に役立てています。

ケーブルクレーンの自動化が実現できたポイントは、従来からよく使われている無線LAN(Wi-Fi)の代わりに

ローカル5Gを選んだ

ことにありました。

ローカル5Gは現場専用の5G基地局を設けて、「高性能なWi-Fi」のように使えるようにしたものです。Wi-Fiよりも高速で大容量の通信を安定的に行えるのが強みです。

今回はKDDIエンジニアリング(本社:東京都渋谷区)との連携によって、ローカル5Gを現場で運用しています。

ローカル5GとWi-Fiの周波数帯の関係

ローカル5GとWi-Fiの周波数帯の関係

この現場では、ローカル5Gと従来のWi-Fiが性能的にどう違うのかを、施工管理者の視点で調べた興味深い実験を行っています。

ローカル5GとWi-Fi伝送比較試験のイメージ

ローカル5GとWi-Fi伝送比較試験のイメージ

例えば、リアルタイム映像の伝送では、Wi-Fiは映像が乱れたり途切れたりするのに対して、ローカル5Gは安定しているのが明らかです。

また、バケットからコンクリートを投下するとバケットが急に軽くなるため、ケーブルの張力によって跳ね上がってしまいます。

このとき、コンクリートの投下に合わせてケーブル張力を緩める操作を行うとバケットをほぼ静止させることができます。こうしたスピーディーな制御もローカル5Gによって可能になりました。

新丸山ダムでのローカル5GとWi-Fiの伝送映像比較(動画再生時間:1分27秒)

放出時における揺動抑制の比較(左:揺動抑制なし、右:揺動抑制あり)(動画再生時間:9秒、映像では砕石を使用)

ローカル5GとWi-Fiの違い

ローカル5GとWi-Fiの違い

最近のカメラなどさまざまな機器は、スマートフォンとWi-Fiで接続できるタイプが多くなっていますが、数年後はこれが5Gに広がり、リアルタイム映像を5G回線に直接送る機能を備えたものが増えてきそうです。

また、5Gのスマートフォン自体も電話だけでなく、USBやWi-Fiと5Gをつなぐために手軽に使える「接続機器」となっていくでしょう。

現場でのさまざまな課題をITで解決していくため、これからは市場にあふれる技術や製品の中で、最も有効なものを選び出す「チョイスエンジニアリング」(=イエイリの造語)のスキルがますます重要になりそうです。

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