管理人のイエイリです。
シールドトンネル工事は、雲の中を数多くの計器のデータだけで飛ぶ飛行機と似ています。
前方はシールド機の隔壁で覆われ、切り羽が見えないなか、数多くの計測データだけで、目的地である立て坑にたどり着く必要があるからです。
飛行機と同じく、シールド機による工事で重要になるのが、周囲の状況認識(Situation Awareness)です。地盤や障害物といった外部の状況や、シールド機自身の位置や姿勢といった内部の状況に目を配りながら、シールド機を操縦していく必要があるからです。
こうした作業はこれまで、施工管理者が頭のなかで施工中のデータや図面などの情報を描きながら行ってきましたが、他の人には見えにくかったのも事実です。
そこで鹿島は、北海道・小樽市で施工中の海底シールド工事で、
ナ、ナ、ナ、ナント、
CIMを状況認識に活用
し、見事、1キロほど沖合にある放水口にシールド機を到達させることができました。
この海底トンネルは、LNG(液化天然ガス)を燃料に発電する北海道電力の火力発電所、石狩湾新港発電所1号機の冷却水を、防波堤の外に放出するための放水路トンネルです。
このトンネルは長さ1045m、内径4.7mでセグメント幅は1.2m、セグメント厚は300mmです。
シールド機は2016年7月に陸上部の立て坑を発進し、約6カ月間掘削した後、17年1月12日に沖合に建設済みだった放水口に到達しました。
現場は海底で、土被りが11~32mとばらついており、最大水圧は0.34Mpaです。そして放水口部分には防波堤があり、その荷重がトンネルにも作用するという、きわめて難しい現場状況です。
そこで鹿島は、この複雑な現場をCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)によって3次元でモデル化しました。
シールド機の周囲にある地盤については、土質のほか深浅測量で得た海底面の高さを取り込みました。また、シールド機の掘進中は、位置や姿勢をシールド掘進管理システムから、セグメント外面とシールド機内面の「テールクリアランス」というすき間のデータも取り込みました。
こうして施工にかかわるシールド機内外の状況を「見える化」したことにより、誰もが同じ状況認識を行いながら、高精度で安全な施工を行うことができたのです。
そして、驚くべきことに、このCIMモデルには、シールド機の推力や切り羽厚、テールクリアランスのすき間を埋める裏込め材の注入量など、
施工中の属性情報
も自動的に付与されていくのです。
このほか、自動付与される属性情報には、シールド機やセグメントの測量結果や、セグメントの製造番号・種類、地盤の土質やN値も含まれます。
鹿島は今後、都市部のシールド工事にもCIMを導入していくほか、掘削時の属性情報をCIMと連動させて蓄積し、様々なシールド工事での施工管理に活用していくそうです。
これだけの情報がCIMモデルにまとめられていると、完成後の維持管理にも大いに役立ちそうですね。そして、残されたデータは、施工技術の伝承にも役立ちそうです。