管理人のイエイリです。
長崎港の南西約18kmの沖合にある端島は、通称「軍艦島」として人気の観光スポットです。
その中に建つ30号棟は1916年(大正5年)に建設され、日本最古の鉄筋コンクリート造アパートです。しかし、築100年を超えた今、老朽化が進み、補修による保存も困難と考えられており、いつ倒れるかについて関心が集まっています。
そこで国際航業は長崎市や東京大学地震研究所の協力を得て、30号棟の屋上にGNSS(全地球測位システム)センサーを設置し、経年変化による水平方向と上下方向の変位計測を始めました。
人工衛星から建物のじわじわとした変位を測るわけですが、
ナ、ナ、ナ、ナント、
約2mmという微少な変位
もとらえることができるのです。(国際航業のプレスリリースはこちら)
GNSS(全地球測位システム)のセンサーを、30号棟の屋上に8カ所と、島中心部に基準点として2カ所設置します。
これらのセンサーと国際航業の衛星測位システム「SMILE safety」を使い、キネマテック(RTK)という測位手法に、同社独自の解析手法を加えることでこうした高精度の変位計測が可能になりました。
計測結果は水平方向と上下方向の変位グラフやベクトル図として表され、時々刻々と変化する建物変形の推移をインターネット経由で確認することができます。
一方、三井住友建設も長崎市と共同で、東大地震研の楠浩一教授のアドバイスを受けて、30号棟の振動計測を始めました。
使ったのは、微小な揺れを感知する高感度の「ワイヤレス振動センサー」(加速度計)です。
省電力設計なのでバッテリーで長時間駆動し、配線工事は不要。建物内のあちこちに置くだけで、自動的に無線計測ネットワークが形成され、振動計測のデータを集めることができます。
このセンサーで日ごろから建物の固有振動数や振動モードを常時観測し、これらのデータに異変が生じた場合には
瞬時にアラートを発報
することで、建物が倒壊する前兆を見逃がしません。(三井住友建設のリリースはこちら)
このシステムは、東大発ベンチャーのソナスと三井住友建設が共同で開発しました。もともとは、長大橋のモニタリングに使われていたものです。
人間の目ではじわじわとした変位や微小な振動などを常時、監視するのは大変です。いざという時に異常を知らせてくれるモニタリングシステムは、少子高齢化による生産年齢人口の減少をカバーする有効な手段になりそうですね。