管理人のイエイリです。
既存の建物を3Dレーザースキャナーなどで計測した点群データなどを基に、出来形(実物の建物の形)のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトで3Dモデルを作ることがあります。
そのとき柱や壁がやや傾いていても垂直にモデリングしたり、窓枠が直角でなくても直角にモデリングしたりすることはないでしょうか。
現存しない図面を再現するという目的なら、こうした方法もありですが、建物の出来形BIMモデルを作る上では、やはり傾いた柱や壁はそのままモデル化した方が正確なのではないでしょうか。
米国建築文書化協会(USIBD)は、出来形BIMモデルや点群データの正確さ(Accuracy)を表現する手段として、
ナ、ナ、ナ、ナント、
LOAという新指標
を使うことを提唱しているのです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の世界では、建物のBIMモデルの詳細度を表すのに、「LOD(Level Of Detailまたは Development)」という指標が使われます。LOD100レベルは概念設計、350は施工図、500は竣工モデル、といった具合です。
これと混同しないように、LOAはLOA10~50までの2桁で出来形モデルの正確さを、統計的指標で表します。
例えば、「LOA30」は、建物のある点に対応するBIMモデル上の点の位置をいくつもの点について調べたとき、両者の誤差が「5mm~15mmの間に95%以上が納まる精度のものを指します。
建物全体が同じLOAである必要はなく、サッシやドア枠などの取り付け部は「LOA40」で、壁の外面は「LOD20」で、といったメリハリをつけた使い分けもできます。
また、点の間隔が開いていると、その間に突起があった場合にはBIMモデルに表現されない場合もあります。
そこで、正確さとは別に「解像度(Resolution)」という指標で、
BIMモデルの精密さ
を表現しようと、USIBDは提唱しています。
例えば、基礎のボルト位置を3Dスキャナーで計測し、工場で鉄骨基部を製作するとき、漠然と計測するのではなく、目標とするLOAが決まっていると、手戻りもなくなりそうですね。
LOAと解像度で既存建物のBIMモデルや点群データの精度を表す方法は、米国・ヒューストンで3月30日から4月2日にわたって開催された「SPAR International 2015」でUSIBDが講演したものです。
BIMで施工や維持管理を効率的に行うためには、実物をそっくり3Dモデル化する“情物一致”を行うことが不可欠です。LOAと解像度は、いわば情物一致の度合いを定量化したものと言えるでしょう。