VRプラットフォーム「F8VPS」で土木DX! 国総研と桜井工業が描く未来の働き方改革(フォーラムエイト)
2024年12月18日

土木分野のDXがいま、新たなステージへと進化している。フォーラムエイトのバーチャルプラットフォームシステム「F8VPS」は、建設業界におけるVR活用の最前線を支え、国土交通省 国土技術政策総合研究所では研究の効率化と広報力強化、桜井工業ではバーチャルオフィス構築による業務効率化とコミュニケーション改善を実現。本記事では、それぞれの事例から「F8VPS」が切り開く建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の可能性を探る。

第1部 国総研編

  「VR国総研」がインフラDXを加速

国土交通省 国土技術政策総合研究所を丸ごとVR空間化した「VR国総研」を上空から見たところ

国土交通省 国土技術政策総合研究所を丸ごとVR空間化した「VR国総研」を上空から見たところ

国土交通省 国土技術政策総合研究所(以下、国総研)は、国土交通省の技術研究を支える中核的な組織だ。社会資本整備の効率化や安全性向上のほか未来志向の政策形成を支える研究を行ってきた。

最近は、老朽化したインフラの維持管理や災害対応、急速な人口減少による労働力不足への対策として「インフラDX」といった新たな課題も加わり、その解決策として、デジタル技術を駆使した業務プロセスの革新にも取り組んでいる。

インフラDX推進の柱としては、(1)BIM/CIMなどの3Dデータの活用、(2)自動化施工や無人化施工を可能にする技術の研究、(3)VR・AR(仮想現実・拡張現実)を活用したシミュレーション技術の高度化、の3つが挙げられる。

こうした課題を解決するため、国総研はフォーラムエイトの「F8VPS」を導入し、「VR国総研」という仮想環境を構築した。

取材に応える国総研企画部企画課課長の尾崎悠太氏(左)と同課建設専門官の湯浅亮氏(右)

取材に応える国総研企画部企画課課長の尾崎悠太氏(左)と同課建設専門官の湯浅亮氏(右)

  コロナ禍の非接触時代にF8VPSを導入

新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以降、公共工事や研究活動にも非接触型のプロセスが求められるようになった。これにより、研究手法もモノそのものを扱う物理的な実験施設や、現地に出掛けての調査に頼るアプローチが見直され、デジタル技術を活用したリモート型の研究手法が急速に注目を集め始めた。

国総研ではこれに先立つ2016年からデジタル技術によって建設プロセスを革新する「i-Construction」施策の一環としてICTの活用を模索していたが、2020年にはその取り組みが本格化した。

その結果、同年末にフォーラムエイトの「F8VPS」を導入し、研究所の敷地や実験棟、実験施設などを丸ごと3Dモデルとして再現した「VR国総研」を構築し、Web上で公開した。この仮想環境は、デジタルによる技術実証の場として活用されるだけでなく、研究データの共有や政策決定支援、さらに広報ツールとしての役割を果たしている。

国総研旭庁舎の研究本館

国総研旭庁舎の研究本館

「VR国総研」で再現した研究本館の建物。本物そっくりだ

「VR国総研」で再現した研究本館の建物。本物そっくりだ

  Web上で国総研バーチャルツアーを開催

「VR国総研」は、茨城県つくば市にある国総研旭庁舎の建物や敷地を詳細に再現し、バーチャルツアー形式でアクセス可能にしたものだ。日ごろ、現地を訪れるチャンスがない人も、全国各地や世界中からWebブラウザーによって、いつでも国総研の施設を見学できるのだ。

このシステムでは、以下のような機能が実装されている:

1. 施設見学のバーチャル化
遠隔地のユーザーが研究所内を散策し、実験施設や研究成果を動画や説明パネルを通じて理解できる。

2. シミュレーション機能
インフラ構造物の点検手法や災害発生時の状況再現など、BIM/CIMデータを基にした高度なシミュレーションができる。

3. データの一元管理
DXデータセンターと連携し、研究データや3Dモデルを効率的に活用する仕組みを整備する。

これらの機能により、「VR国総研」は研究活動の効率化と広報活動の両面で革新をもたらしている。

大型4面スクリーンの没入型立体視表示システムで広い視野角と高い没入感を伴う運転シミュレーションが行えるドライビングシミュレーター

大型4面スクリーンの没入型立体視表示システムで広い視野角と高い没入感を伴う運転シミュレーションが行えるドライビングシミュレーター

ドライビングシミュレーターの運転席から見た映像。バックミラーやサイドミラーの見え方もVRで再現されている

ドライビングシミュレーターの運転席から見た映像。バックミラーやサイドミラーの見え方もVRで再現されている

  維持管理や防災の研究、広報活動をVR化

「VR国総研」が特に効果を発揮しているのは、BIM/CIMデータとの連携による研究効率の向上だ。例えば、ドローン(無人機)などを活用した橋梁やトンネルなどのインフラ構造物の点検や修繕計画の立案が、VR空間内で迅速かつ正確に行えるようになった。VRを使ったシミュレーションは、物理的に現地で調査や実験を行う方法に比べて大幅なコスト削減が実現した。

さらに、防災分野の研究では、洪水や地震による災害時の状況や被害を3Dモデルで視覚化することで、災害対応計画をリアルに検討でき、実効性が高まった。こうした研究成果のデータは政策決定者にも提供され、科学的根拠に基づくインフラ整備の計画策定にも活用されている。

「VR国総研」は研究活動だけでなく、広報ツールとしての活用でも大きな成果を上げている。例えば、新型コロナ禍でリアルな見学会が制限される中、オンライン上で研究施設を公開することで、国民や教育機関からのアクセスが急増した。これにより、インフラDXの重要性や国総研の取り組みに対する理解がいっそう深まった。

無人化施工などの実験を行う建設DX実験フィールド。VR国総研なら手軽に見学できる

無人化施工などの実験を行う建設DX実験フィールド。VR国総研なら手軽に見学できる

国総研では、今後も「VR国総研」を基盤として研究開発を加速させる方針だ。例えばAI(人工知能)技術を活用したデータ解析の自動化や、教育機関との連携によるVR学習プログラムの提供が計画されている。

このほか社会インフラの維持管理における国民参加型の取り組みとして、VR技術を用いた意見収集やシミュレーション結果の公開も視野に入れている。


第2部 桜井工業編
  業務効率化と健康管理を支えるバーチャルオフィス

桜井工業が構築したバーチャルオフィス「Sakurai Collabo」

桜井工業が構築したバーチャルオフィス「Sakurai Collabo」

現場にいる人の所在も視覚的に把握できる

現場にいる人の所在も視覚的に把握できる

桜井工業(本社:東京都江東区)は、80年以上にわたり建築設備工事を手がける老舗企業だ。特にタワーマンションや非住宅建築物の分野で高い実績を持つ。全国に支店を持つ同社は、各地の現場で設計・施工を進めている。

こうした分散型の業務態勢で重要課題となっていたのは、情報共有やコミュニケーションの円滑化だった。さらにコロナ禍が拡大していった2020年以降は、従業員の健康管理やリモートワークへの対応が求められるようになり、従来の業務プロセスの見直しが求められたのだ。

  VRオフィス「Sakurai Collabo」で在席や健康を把握

こうした課題を解決するための第一歩として、桜井工業は2020年にフォーラムエイトの「F8VPS」を基盤としたバーチャルオフィス「Sakurai Collabo」を構築した。このシステムは、以下の3つの主要機能を備えている。

1つ目は「在席管理とコミュニケーション機能」だ。アバターを用いて従業員の所在をリアルタイムで表示し、ビデオ会議やチャットを通じて迅速なコミュニケーションを可能にする。

2つ目は遠隔で社員の健康管理を行う機能だ。各社員が体温や脈拍、体調に関するデータを入力し、従業員の健康状態を一元的に把握できる。これにより、感染症対策やメンタルヘルスの支援が強化する。

各社員の居場所がリアルタイムにわかる

各社員の居場所がリアルタイムにわかる

Sakurai Collaboに入室した後、現在の体調について入力する画面

Sakurai Collaboに入室した後、現在の体調について入力する画面

他の社員の顔アイコンをクリックすることで、体調を遠隔確認できる

他の社員の顔アイコンをクリックすることで、体調を遠隔確認できる

3つ目は勤怠管理や請求書処理など、既存の基幹業務システムと統合だ。これにより、データ転記や二重入力をなくし、業務プロセス全体の効率化を実現する。

「Sakurai Collabo」を導入したことで、従業員の業務効率は大幅に向上した。特に、2Dおよび3Dのモード切り替えが可能なインターフェースにより、現場ごとの状況をリアルタイムで共有できる仕組みが構築された。

例えば2Dの画面では、本店・支店の全社員が在席か離席か、休憩中や外出中かといった状態をアバターで表示し、所在をリアルタイムに確認できる。また会議室の枠に自分や会議に参加して社員のアバターを入れると、ビデオ会議やチャット機能がスタートするといった具合だ。

Web会議機能では、会議室にアバターを入れると会議がスタートする

Web会議機能では、会議室にアバターを入れると会議がスタートする

ビデオ通話、画面共有、チャット機能、ホワイトボードの表示などコミュニケーションツールが充実し、グループでのコミュニケーションが可能

ビデオ通話、画面共有、チャット機能、ホワイトボードの表示などコミュニケーションツールが充実し、グループでのコミュニケーションが可能

3Dの画面では、社員の状況が立体的に表示されるとともに、各地の天候や暑さ指数(WBGT)などの情報も反映される。

全社員が共通のプラットフォームを利用することで、部門間の連携が強化され、業務全体の透明性が向上した。

一方、健康管理機能については、従業員が日々の体調を簡単に報告できる仕組みが整備された。管理職が各社員のアイコンの表情によってメンタルヘルスを含む状況を把握しやすくなった。これにより、健康リスクの早期発見や予防が可能となった。

  出勤・退勤データの分析で働き方改革も

桜井工業では、「Sakurai Collabo」をさらに進化させる計画を立てている。

例えばショールーム機能の強化だ。顧客向けに製品や施工事例をVR空間で紹介する展示会やウェビナーなどの活用に着目し、他社ソフトとの連携や機能のカスタマイズによって、新たなビジネスチャンスを開拓する。

ユーザーインターフェースなどの操作性の改善にも取り組んでいる。社内の要望を反映した機能の追加や重複の解消などで、クリック数を削減し、試行錯誤しながら使い勝手の改善に努めている。

さらにSakurai Collaboのオープニング画面では、既存基幹システムと連携してタイムカードを打刻できるよう設定している。社員一人ひとりが自身の出勤・退勤状況や累積残業時間を確認でき、2024年問題の「残業上限規制」にも備える仕組みも取り入れている。

今後はこのデータから従業員の残業時間や体調データを分析し、健康管理機能の高度化や働き方改革を推進していく予定だ。

「Sakurai Collabo」は、桜井工業の業務効率化と健康管理の基盤として機能しているだけでなく、同社がICTを活用した働き方改革を実現する象徴的なシステムとなっている。今後も、フォーラムエイトとの連携を通じてさらなる発展が期待されている。

桜井工業のバーチャルオフィス構築・運用を担う関係者。左から執行役員 東京支店長の髙栁光一氏、取締役 営業本部長の笠島久幸氏、執行役員 管理本部長の小川達則氏、ICT推進室の丸山隆司氏

桜井工業のバーチャルオフィス構築・運用を担う関係者。左から執行役員 東京支店長の髙栁光一氏、取締役 営業本部長の笠島久幸氏、執行役員 管理本部長の小川達則氏、ICT推進室の丸山隆司氏

【問い合わせ】
株式会社フォーラムエイト
東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA 棟21F
TEL:03-6894-1888 FAX:03-6894-3888
各営業窓口はこちらをご覧ください
E-mail : forum8@forum8.co.jp

 

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