「UC-win/Road」で近未来社会をドライブ! 自動運転、高齢化が進む交通課題を解決(フォーラムエイト)
2025年2月2日

自動運転の実用化やさらなる高齢化の進行など、近未来における“交通社会の課題”を研究するために、フォーラムエイトのドライビングシミュレーターが活躍している。3DVRソフト「UC-win/Road」で未来の交通状態をリアルに再現し、実際に運転してみることで様々な課題を明らかにしようという挑戦に取り組んでいる。明治大学自動運転社会総合研究所と自動車技術総合機構 交通安全環境研究所の未来を先取りした研究を紹介しよう。

現地の点群データをUC-win/RoadでVR化し、自動運転をシミュレーション(左)。高齢者ドライバーの運転実験(右)。左は明治大学、右は自動車技術総合機構の研究例

現地の点群データをUC-win/RoadでVR化し、自動運転をシミュレーション(左)。高齢者ドライバーの運転実験(右)。左は明治大学、右は自動車技術総合機構の研究例

第1部 明治大学自動運転社会総合研究所編
自動運転社会への課題を学際的に研究

明治大学自動運転社会総合研究所(MIAD。所在地:東京都千代田区)では、自動運転技術の社会実装に向けた学際的課題の研究を行っている。2018年に設立され、法律から保険、技術、地方創生までの4部門を柱に、学内外の専門家と連携しながら多岐にわたる研究テーマに取り組んでいる。

こうした学際的な幅広いテーマの研究で活用されているのが、フォーラムエイトの3DリアルタイムVRソフトウェア「UC-win/Road」やドライビングシミュレーター(DS)だ。自動運転技術の適用範囲を拡大し、復興や地域創生への貢献を目指し、これらのツールを活用する中で、特に福島県浜通り地域では実証実験を行っている。

明治大学自動運転社会総合研究所

明治大学自動運転社会総合研究所

 自動運転の課題と学際的アプローチ

明治大学自動運転社会総合研究所中林真理子教授

明治大学自動運転社会総合研究所
中林真理子教授

自動運転技術を社会実装するためには、技術的課題だけでなく法律や保険の整備、地域社会との調和といった幅広い課題をクリアする必要がある。MIADはこれらの課題に対応するため、文系と理系の研究者が協働する学際的アプローチを採用している。

法律面では、自動運転車がかかわる事故が発生したときの賠償責任や法的手続きの整備が重要なテーマとなっている。保険分野では、自動運転技術が普及することで発生する保険料の見直しや新しい保険商品設計が求められている。

これらの課題に対し、明治大学自動運転社会総合研究所の中林真理子教授を中心に、保険と法律分野の研究が進められている。

一方、技術面では自動運転車に搭載されるセンサーやEDR(イベントデータレコーダー)、DSSAD(作動状態記録装置)のデータから実車の挙動をDS上で再現する検討や、記録装置の規格についての検討などが進行中だ。また、地方創生の観点からは、福島県浜通り地域の3DマップやVR化による地域情報を発信し、自動運転や電気自動車などの次世代モビリティ、さらにはロボットによる過疎地域の復興についても議論している。

 DSによる未来の課題解決

なかでもドライビングシミュレーターは、自動運転技術の研究における重要なツールだ。DSを活用することで、現実世界では再現が難しい状況を仮想空間でシミュレーションし、課題解決のための実験が可能になるからだ。

MIADでは、フォーラムエイトの「UC-win/Road」を活用し、福島県浜通り地域を対象とした交通シミュレーションを実施した。3D地図データを用いて道路環境や交通状況を再現することで、次世代モビリティの導入可能性を検討している。

東北大学との共同研究では、3D地図データの制作やデータ活用方法の研究が進行中で、福島復興に資する「知」(復興知)を誘導・集積する福島復興知事業とも連携している。特に、津波でインフラ環境が大きく変わってしまったところでは、デジタルな地図環境のプラットフォームを整備できれば一気に次世代の街づくりに繋がってくる可能性がある。

デジタル地図を自動運転とDSの双方で活用できるようにすることで、災害復興と次世代モビリティの両立が実現されると、大きな相乗効果を期待している。

●ドライビングシミュレーターに関連する研究課題の例

  • 自動車挙動の再現手法の開発
  • 自動運転車に搭載される記録装置の規格化
  • 事故原因解析のためのデータ活用
  • 交通参加者間の合意形成を目的としたシミュレーション
  • 新たな法規制の検討と提案

 福島浜通り地域での実証実験

福島県浜通り地域は、東日本大震災で大きな被害を受けたエリアだ。この地域での実証実験は、復興支援と地域創生の両面で重要な意味を持つ。

MIADは、岡山大学環境生命科学研究科の西山哲教授や国際航業の協力のもと、道路周辺の3D点群データを取得するMMS(モバイルマッピングシステム)を福島県浜通り地域で走行させ、3D点群データを収集した。

双葉町で地上部分だけでなく、地下埋設物も含め、道路の環境をできる限りデータ化して、DSに取り込んだ。

UC-win/Roadを使い、収集した3次元レーザ点群を可視化した例

UC-win/Roadを使い、収集した3次元レーザ点群を可視化した例

東北大学未来科学技術共同研究センター鈴木高宏教授

東北大学未来科学技術共同研究センター
鈴木高宏教授

MIADと連携して研究を行う東北大学未来科学技術共同研究センターの鈴木高宏教授は、「特にDSのボトルネックとなっているシナリオ作成の部分をより円滑化・効率化したい」と語る。

MIADでは、研究活動に学生を積極的に参加させることで、次世代の研究者育成を図っている。DSやAIに関する講習会を開催し、実車データの収集や分析に携わる学生のスキル向上を支援。これにより、実社会で即戦力となる人材を育成している。

また、研究活動を通じて得られた知見は、地方創生や災害復興だけでなく、国全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる可能性を秘めている。中林教授は、「異なる専門分野が交わることで新たな知見が得られる」と語り、学際的研究の意義を強調している。

明治大学自動運転社会総合研究所客員研究員 吉田直可弁護士

明治大学自動運転社会総合研究所
客員研究員 吉田直可弁護士

MIADにフォーラムエイトのDSの導入を決めたのは、明治大学自動運転社会総合研究所で客員研究員を務める吉田直可弁護士だ。同氏は今回の取り組みを通じて「多くの研究機関や研究分野の専門家同士が、学際的な研究に参加するようになれば新たな発想や発展にもつながるはず」と語った。「文系理系を問わず、いろいろな研究を一緒に行うというだけで新たな知見を生むと思います」(同)。

今後もMIADは、自動運転技術の社会実装を目指し、先進的な研究と社会貢献を進めていく計画だ。


第2部 自動車技術総合機構 交通安全環境研究所編
高齢ドライバーや自動運転の課題をVRで探る

交通安全環境研究所 自動車安全研究部関根 道昭 副部長

交通安全環境研究所 自動車安全研究部
関根 道昭 副部長

自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 自動車安全研究部では、フォーラムエイトの「UC-win/Road」を活用した定置型ドライビングシミュレーターを活用した先進的な研究が行われている。といっても、クルマの開発のためではなく、自動運転や高齢者ドライバーが普及した、将来の交通社会を見据えた安全・安心の実現が狙いだ。

副部長の関根道昭氏は、「われわれの研究目的は車両開発ではなく、安全性の評価を通じて国際的な技術基準の調和を推進することにあります。技術の発展に伴って将来課題となるかも知れないことを先駆け的に調査・研究し、必要な知見を迅速に提供できる体制を構築しています」と語る。その活動の中核を担うのが、2019年に導入されたドライビングシミュレーターだ。

 高齢化社会の交通課題に対応する最新型DS

同研究部では2003年に初代のドライビングシミュレーターを導入したが、モニターの視野が狭いなど、未来の交通事情を対象とした実験ニーズには対応できなかった。

未来の課題を解決する最新型ドライビングシミュレーター

未来の課題を解決する最新型ドライビングシミュレーター

そこで今回の新型DSには、従来の課題を解消する機能や装置が装備されている。例えば、前方のモニターには視野角の広いものを使用し、解像度も上げた。さらに後方の視界もの確保し、既存のヘッドアップディスプレイ(HUD)も使えるようにする、といった具合だ。こうした改良の結果、リアルな運転環境を再現できるようにした。

さらに、各種データの取得機能も強化し、ステアリング操作やペダル操作、視線計測といった詳細なデータ収集が可能になった。

最新型ドライビングシミュレーターは運転者の様々な行動データも収集できる

最新型ドライビングシミュレーターは運転者の様々な行動データも収集できる

加藤洋子研究員が主導した初期のプロジェクトでは、高齢ドライバーが運転する際の注意点を明らかにするため、東京都三鷹市周辺を模したVR環境を制作。歩行者の飛び出しや自転車の追い抜きといった日常的なシナリオを再現し、反応時間や運転行動を計測した。この実験によって、高齢ドライバーの特性や安全確保の方法について具体的な知見を得ることができたという。

 実験事例から広がる研究の可能性

交通安全環境研究所 自動車安全研究部加藤 洋子 研究員

交通安全環境研究所 自動車安全研究部
加藤 洋子 研究員

DSを使った研究は、自動運転が普及した未来の交通社会での問題にも踏み込んでいる。例えば、自動運転から手動運転に引き継ぐ際、人間と機械の接点となるHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)の影響評価だ。

加藤研究員は高速道路を数分間、自動運転車で走行した後、手動運転への切り替えを促す音の合図が起きるというシナリオをVRで表現し、被験者である高齢者や若者らの反応時間や、自動運転中にドライバーがスマートフォンを操作していた場合の安全性への影響を調べた。

また、ヘッドライトによって車両前方の路面に、運転支援情報を描画する新技術の影響も実験した。UC-win/Roadの「バーチャルディスプレイプラグイン」を活用して路面描画を再現し、ドライバーが路面描画を注視した場合に、先行車両のブレーキランプ点灯への反応が遅れるかどうかなどを調べたのだ。

車両前方にヘッドライトで運転支援情報を描画する実験

車両前方にヘッドライトで運転支援情報を描画する実験

前の車のブレーキランプが点灯したときの反応時間などを調べた

前の車のブレーキランプが点灯したときの反応時間などを調べた

この実験では今後もDSを活用して路面描画ランプの有効性や安全性を探っていく予定で、新技術の実用化に向けた課題を明確化している。

 未来への交通課題に対応するDS活用

関根副部長は「UC-win/Roadのドライビングシミュレーターは、路面描画のような映像表示や外部のシステムとの組み合わせや制御などの仕組みが用意されているので、やりたい実験が割と簡単に実現できます」と、最新型DSの柔軟性とサポート体制について評価している。フォーラムエイトの迅速な対応やカスタマイズ性の高さも、研究の円滑な進行を支えているようだ。

さらにVR技術の活用で、実車では困難な実験や評価が可能になり、新たな視点での安全性向上策を模索する道が広がっている。例えば、ヘッドライトの高輝度化がまぶしさに与える影響や、自動運転中のHMIが歩行者に与える印象など、将来的に実装が求められる技術課題についての実験だ。

自動車安全研究部のVR技術を活用した研究は、未来の自動運転や高齢化社会を見据えつつ、安全で持続可能な交通社会を実現する道筋を示している。

東京都調布市にある自動車技術総合機構 交通安全環境研究所の建物

東京都調布市にある自動車技術総合機構 交通安全環境研究所の建物

【問い合わせ】
株式会社フォーラムエイト

東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA 棟21F
TEL:03-6894-1888 FAX:03-6894-3888
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