管理人のイエイリです。
建物の環境性能を高めるには、建物の躯体を空調負荷が小さい設計にするとともに、建築設備も並行して検討しながら設計することが重要です。
ところが実際は、設計の初期段階では設備を施工する専門工事会社が決まっていないため、建物の躯体の設計が終わった後に建築設備の設計・施工を行うことが多いので、設備の設計は十分な「フロントローディング」(業務の前倒し)ができていないのが実情です。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した設計プロセスの中で、建築と設備のコラボレーションを設計の初期段階から実現するための新しい職種が注目されています。
その名は、
コミッショニング技術者
というのです。
「コミッショニング」とは、建築設備が建物所有者やユーザーの意図通りに設計、施工、運用されていることを検証するプロセスをいいます。
2月22日、東京・飯田橋で開催された「サステナブルデザイン:環境設計に対応するBIMセミナー」(主催:オートデスク)で中部大学工学部建築学科の山羽基教授は、「建物の環境性能実現のためのコミッショニングとBIMの活用」と題して、基調講演を行いました。
初期の企画、設計から工事発注、施工を経て、受け渡し、運転における一連のコミッショニング業務をBIMのワークフローの中で行う構想を具体的に提案したのです。
講演する中部大学工学部建築学科の山羽基教授(写真:家入龍太。以下、同じ) |
会場は約150人の参加者で超満員 |
日本でコミッショニングを普及させるために活動しているNPO法人「建築設備コミッショニング会(BSCA)」では、「コミッショニング技術者」という資格認証制度を設けており、2011年5月現在で「性能検証技術者(CxPE)」を25人登録しています。
いわば、環境性能を高めるための設備監修者のようなポジションを目指す職能と言えそうです。
コミッショニングによる環境性能の向上イメージ(資料:山羽基氏) |
NPO法人「建築設備コミッショニング会(BSCA)」のウェブサイト |
一方、コミッショニングを実践する上では、課題もたくさんあります。例えば金額と工期の厳しい現状で、
正当な報酬をもらえる業務
として成り立つか、という問題です。このほか、設計者や施工者との良好な関係を保てるか、性能検証者としての責任を持てるかとなど、コミッショニング業務の普及には解決すべきことも多いようです。
しかし性能検証技術者がいると、設備を施工する会社が決まっていない設計の初期段階でも、意匠設計者と連携して建物の環境性能を高める設計が実現しそうですね。