利用から「学」へ!CIM時代に「土木情報学委員会」が発進
2012年6月13日

管理人のイエイリです。

建築分野でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入に続けとばかり、土木分野でも“CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)”、すなわち「土木のBIM」導入の気運が高まっています。

これに呼応するように、土木学会でも情報技術への取り組みが進化しました。これまで土木分野でのITの活用について調査研究を行っていた「情報利用技術委員会」の名称を、6月1日から

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

「土木情報学委員会」

 

に変更したのです。

 
6月にリニューアルスタートした土木学会土木情報学委員会のウェブサイト(資料:土木学会)

6月12日に東京・晴海で開催された「3次元インフラBIMセミナー最新動向セミナー」(主催:応用技術)で、同委員会の委員長を務める大阪大学大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻の矢吹信喜教授が、名称変更の理由について「ココだけの話」を交えながら熱く語りました。

「情報技術を利用するだけの技術に関して調査研究を行っても普遍性はなく、学会でやる意義はない。利用技術ではなく『学』にする必要がある。そこで『土木情報学』の名前を冠した」と矢吹先生は説明します。

土木情報学へ進化するためには、学問体系、サイエンス、論文集が必要ということで、ITの分野を計測や画像処理、データベースなど6分類に分け、これらと既存の構造、水理、地盤、計画など8つの土木分野を組み合わせることで、「土木情報学」としての体系化を図っていくとのことです。

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講演する大阪大学の矢吹信喜教授(左)と会場(右)(写真:家入龍太。以下同じ)

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土木情報学の定義を説明する矢吹教授

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土木情報学の体系

日本の土木に大きな影響を与えている「設計・施工分離方式」は、有史以来の建設の長い歴史からみるとわずかここ50年間行われていたにすぎないそうです。

それを象徴するかのように、CALS/ECでは設計過程で作られた貴重な3次元情報が施工段階に引き継がれず、様々な非効率を生んでいました。

これを改善するためには、電子納品や電子入札、情報化施工などで生まれた個別の要素技術を、設計から施工、維持管理へと至る「ワークフロー」に乗せて統合化・システム化を図り、生産性の向上を実現することが必要だと、矢吹先生は語ります。

また、同委員会では

 

「ICT施工研究小委員会」

 

を立ち上げ、設計、施工、維持管理のための3次元モデルやデータ交換フォーマットを提案していくことにしています。

委員長の奥村組情報システム部長 五十嵐善一氏は、構造設計用BIMソフト「Revit Structures」による土木構造物の配筋設計などに取り組んできた実績があります。現場感覚を生かした実用的な研究が進むことを期待したいですね。

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CIMを生かしたワークフローのイメージ(資料:五十嵐善一氏)

セミナーではこのほか、オートデスクが「土木のBIM」にかかわる数本~10本の3次元設計ソフトをセットにした「Infrastructure Design Suite」の内容や活用事例を解説したほか、応用技術が3次元レーザースキャナーを使った橋梁のモデリング手法などについて説明しました。

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オートデスクの「Infrastructure Design Suite」を使ったワークフロー(資料:オートデスク)
応用技術が行った橋梁の3Dレーザースキャナーによる測量とモデリング例(資料:応用技術)

土木分野も以前から3次元での解析や設計を行ってきた歴史があり、CALS/ECではインターネット時代のIT活用が要素技術として進化しました。

これからの「CIM」では、3次元CADやGISなどのプラットフォームにその情報を集約し情報共有するとともに、スムーズにデータや情報を引き継いでいくためのワークフローを意識しながら生産性向上に実現することに、関心が移ってきたようですね。

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