地震時の建物挙動を激写!三井住友建設が開発した「写震器」
2012年7月24日

管理人のイエイリです。

現行の耐震設計基準で設計された建物は、建物のライフサイクルの間に極めてまれに起こる大地震に対しては、建物の崩壊を防止し、人命を保護できるレベルにあります。

問題は、地震後にその建物に入っても大丈夫かどうかという安全性の判断です。東日本大震災では被災した工場を生産再開にこぎ着けるため製造ラインや製造装置の点検をする必要がありましたが、大地震で耐力が低下した建物が、その後に発生する余震に対して、どの程度の耐力を持っているかがなかなかわかりませんでした。

大地震に遭った建物が、余震に対してどれだけ健全性を持っているのかを素早く判断できるようにするため、三井住友建設は新しい装置を開発しました。

その名は、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

「写震器」

 

というのです。ネーミングが秀逸ですね。

建物の地震時の損傷程度を知る上で、最も厳しい部分をあらかじめ定めておき、その場所にターゲットを置いてCCDカメラなどで動きを光学的に追跡するものです。

1秒間に50~100個程度のデータを0.5mm単位で記録し、LANやクラウド上のサーバーに送信します。収集したデータは、あらかじめ準備してある判定基準と照合することで、余震に対する健全性を評価する、という仕組みです。

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余震に対する建物の健全性を判断する「写震器」(資料:三井住友建設)

これまで地震時の建物の揺れを記録する方法としては、加速度データを使うのが主流でした。しかし、建物の被害状況を知るためには層間変位など、建物各部の変形に変換する必要がありました。

しかし、建物の重量や剛性などにはバラツキがあるので、加速度から各部の変形が正確に出せないことも多かったのです。その点、「写震器」は振動による対象部位の軌跡をダイレクトにカメラにとらえられるので、建物主要部の変形状態を正確に知ることができます。

カメラには非常用のバッテリーが付いており、停電時も30分間、記録できるようになっています。ちなみにこれらのシステムを維持するための電気料金は月に数百円程度とのことです。

いつ起こるのか分からない大地震のために、カメラを設置するのはもったいないと思われる人もいるでしょう。CCDカメラを使った場合には、いつもは工場内部の監視用に使い、一定の大きさの地震波が来たときに

 

自動的にターゲットを追跡

 

するように設定することもできます。

また、主要機器には既製品を用いているため、機器や回線の準備、設置などの費用は安価に抑えることができます。

この写震器は、同社が設計施工したロッテ浦和工場に設置し、運用を始めています。

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