ドーンという発破音を打ち消す!鹿島がトンネル工事用騒音低減システムを開発
2012年9月5日

管理人のイエイリです。

ヘッドホンやイヤホンには、外部の騒音だけを消す「アクティブノイズコントロール(ANC)」という機能を持ったものがあります。ANC機能付きのヘッドホンを使うと騒音がある場所でも、音楽などをクリアに楽しんだり、静かに読書や昼寝をしたりすることができます。

その原理は、騒音の音波とプラスマイナスが逆になった逆位相の音を人工的に作り出し、騒音に重ね合わせることで「ゼロ」にするというものです。

鹿島はこのほど、ANCの原理を工事現場で活用し、工事騒音を低減することに成功しました。その工事騒音というのは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

山岳トンネルの発破音

 

だったのです。

これまで発破騒音を低減するためには、トンネル坑口に防音扉を設ける方法くらいしかありませんでした。防音扉は発破音の高周波成分はある程度低減できますが、「ドーン」と響くような低周波音減衰しにくく、遠くまで届くため発破時の騒音で家屋の窓ガラスや扉がガタガタと震えることもありました。

そこで鹿島は、ANCの原理を忠実に巨大化したシステムを開発したのです。トンネル坑口の外側には防音扉を通過してくる発破騒音を拾うための「参照マイク」を設け、この音のデータをパソコンで瞬時に解析し、騒音を最小にする逆位相の信号を「制御スピーカー」から流します。

20120905-image1.jpg

鹿島が開発した発破騒音用のANCシステムシステムの仕組みと構成機器(写真・資料:鹿島。以下同じ)

20120905-image2.jpg
四国地方のトンネル現場での実験状況

発破騒音を打ち消すだけあって、制御スピーカーの大きさも半端ではありません。写真を見るとかなり大きなスピーカーが坑口全体を覆うように縦横にずらりと並んでいるのが分かります。

さて、その効果はかなりよい結果が得られました。100Hz以下の低周波帯の時系列波形では音圧レベルが、

 

最大で7~8dBも減った

 

ことが確認でき、波形全体で音圧レベルの減少が確認できたのです。

また、発破騒音の波形は急激に立ち上がり、大きく変化する「衝撃音」であるのが特徴ですが、発破音の初動時から遅れることなくANC効果が発揮されていることが認められました。

20120905-image3.jpg

音圧時系列波形でANCを「オフ」にしたとき(上)と、「オン」にしたときの比較。オンにした方が波形の振幅が小さくなっている

20120905-image4.jpg
音圧レベルの時系列波形による比較

また、相対音圧レベルの周波数スペクトルでも、100Hz以下の低周波帯のほぼ全域でANCにより最大10dB程度の騒音低減が確認できました。

鹿島はこのシステムを開発するために、数多くのトンネル現場で実発破音を録音し、解析してきたそうです。今後は低周波帯域の騒音低減率をさらに向上させるとともに、高い周波数帯域まで適用範囲を拡大させる予定です。

そして、トンネルごとに構成機器の仕様や設置方法、制御パラメータの事前調整を行う設計法をブラッシュアップして、様々なトンネル形状や発破音特性に対応できるANCシステムを開発していくとのことです。

(Visited 2 times, 1 visits today)

Translate »