管理人のイエイリです。
米国の首都、ワシントンDCのスミソニアン博物館に隣接する「SWエコディストリクト(SW Ecodistrict)」という広さ45万m2のエリアには、エネルギー省や連邦航空局、連邦調達局などの官庁オフィスが立ち並んでいます。
現在のSWエコディストリクト(資料:Kenneth T Walton) |
この地区を、環境配慮都市型都市に大改造する計画が進んでいます。地区からのCO2排出量を51%減、水道使用量を70%減にするほか、地区全体の40%を樹木で覆い、地表の少なくとも35%を透水性のものにするそうです。
また、建物改修工事中に出る廃材の75%を再利用し、ゴミの8割を埋め立てではない方法で。処理するそうです。
改造後のSWエコディストリクトのイメージ(資料:NCPC) |
この都市計画を実現するために。連邦調達庁(GSA)と国家首都計画委員会(NCPC)、ワシントンDCが共同で開発している手法が「GEO BIM」です。
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMとGISを連係
させたものなのです。
BIMによる設計や様々な景観・環境解析を行い、それをGIS上にまとめて都市の設計とエネルギー消費量などの結果を重ねて見せ、合意形成に役立てようというものです。
その手順は、まず既存のビルのエネルギー使用量の調査から始まります。そしてビルをBIMモデル化し、階数や床面積などの基本的なデータと、エネルギー使用量を入力して「EUI(エネルギー使用度)」という指標を計算します。
既存のビルごとにエネルギー解析を行った結果(資料:Kimon Onuma) |
エネルギー使用度とは、1年間に建物が消費するエネルギー使用量(kBtu)を床面積(平方フィート)で割った値です。
次に、このBIMモデルをGIS上に配置し、地区の景観に合わせて各ビルのEUIを高さで表します。
GIS上に建物のBIMモデルとエネルギー使用度を重ねて表示したもの(資料:Kimon Onuma) |
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GIS上に配置するBIMモデルの例(資料:Kimon Onuma) |
ビルの改装計画や緑化計画などに合わせて様々な環境解析を行った結果もGIS上で集約、BIMモデルとともに地区全体のエネルギー使用量などを集計します。
既存ビルの改修計画シナリオごとにエネルギー使用度などをGIS上に表示し、比較検討する(資料:Kimon Onuma) |
そして複数の開発シナリオをGIS上で比較、検討し合意形成ができると、GISから建物や街路などの基本データをBIMソフトに読み込み、さらに設計を進めていく、という流れです。
GIS上での検討が終わった後は、BIMソフトにデータを受け渡し、さらに詳細設計へと進んでいく(資料:Kimon Onuma) |
GEO BIMの開発には、世界的なBIM仮想コンペ「BIMStorm」の創始者である
キモン・オーヌマ氏
もかかわっています。
6月に米国デンバーで開催されたAIA(アメリカ建築家協会)全米大会で「GEO BIM」について発表するキモン・オーヌマ氏(右)(写真:家入龍太) |
日本ではHEMS(住宅用エネルギー管理システム)を備えたスマートハウスに続いて、地域全体のエネルギー管理を最適化するCEMS(地域エネルギー管理システム)による都市規模でのエネルギー使用最適化を目指すスマートシティー実現への取り組みが始まっています。
そのツールとして、BIMやGISを取り入れることもできそうですね。逆に米国に日本のCEMSを提案し、GEO BIMと連係させることができるかもしれません。今後の発展が楽しみです。