3Dプリンターで”施工”も!五重の塔をBIMモデル化した千葉大学
2013年8月23日

管理人のイエイリです。

日本の伝統建築である寺や神社には、なだらかなカーブを描くような部材や水平、垂直でない部材や、「巻斗(まきと)」と呼ばれる特殊な受け材なども多く、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトの「梁」や「柱」などのパーツでは、なかなかモデリングできません。

この難題にチャレンジしたのが、千葉大学大学院工学研究科の平沢研究室です。建築・都市科学専攻建築学コースの平沢岳人准教授と加戸啓太さん(現・建築研究所)は、千葉県市川市にある法華経寺五重塔を、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

BIMで完全に再現

 

したのです。

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細部まで再現されたBIMモデル

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平沢岳人准教授(左)と加戸啓太さん(右)(資料:千葉大学平沢研究室、写真:家入龍太。以下同じ)

 

BIMソフトはArchiCADを使っていますが、標準の梁や柱などではとてもこのようなBIMモデルは作れません。そこで活用したのが、BIMパーツをオリジナルで作れる「GDL」というスクリプト言語です。

このGDLを使って、BIMモデルに使われている各部材のBIMパーツを作り、一つ一つ、組み立てていったのです。BIMパーツは大きさが変数で定義されており、その変数は別のデータベースシステムから読み込むという方式を採用しています。

また、データベースとArchiCADを連携するソフトは、C言語で独自に開発しました。つまり、ArchiCADのほかGDL、データベース、C言語という“三種の神器”を組み合わせることにより、五重の塔のBIMモデルが成り立っているというわけです。

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部材を記述したGDLのスクリプト(左)と法華経寺五重塔の全体モデル(右)

 

各部材は宮大工がノミで加工する仕口レベルまで忠実に再現されており、その数は合計6207個にも及びます。モデリング作業に要した時間は約2年間でした。

作業を担当した加戸さんは、宮大工が差し金を使ってカーブの線形や仕口の形状などを決める手順を学び、それをGDLで再現しました。GDLでのプログラミングより、宮大工の技を勉強する方に時間がかかったそうです。(詳細は平沢研究室のウェブサイトで)

加戸さんは、出来上がったBIMモデルを元に、

 

3DプリンターやCNCルーター

 

で部材の模型を作り、ちゃんと施工できるかどうかの検討も行いました。

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3Dプリンターで造形した部材を組み立てた模型

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3Dプリンターで造形した部材を組み立てて作った最上層の模型
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CNCルーターでケミカルウッド (合成木樹脂)を切削加工して作った模型。シャープな仕上がりです
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模型製作に使用した3Dプリンター(左)とCNCルーター(右)
BIMによる施工シミュレーション

各地にある五重の塔は、構造としては似ているそうです。そのため、今回、開発したシステムを使えば、短期間で他の五重の塔もBIMモデル化できるそうです。京都・東寺の五重の塔なども、BIMモデルで見てみたいですね。

日本の伝統建築もBIMモデルとして保存しておくことで、維持管理だけでなく、技術の伝承や学術的な研究など、多方面に活用できそうですね。

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