管理人のイエイリです。
建物や仏像などの文化財を3D形状を計測し、デジタルアーカイブやCGとして保存する取り組みが行われています。
その手法としては、3Dレーザースキャナーが一般的ですが、機器を据え付けるために計測する物の周囲に大きな空間が必要だったり、特別な技術者が必要だったりという課題もありました。
そこで凸版印刷と東北大学大学院情報科学研究科 青木孝文研究室は、一般に使われているデジタルカメラで撮影した数十枚の写真から、
ナ、ナ、ナ、ナント、
全自動で3Dモデル
を作成できる画像処理技術を開発したのです。
今回、開発した技術は「多視点ステレオ技術」というもので、異なる視点から撮影した複数の画像から、対象物の3Dモデルを作成します。
普通のデジカメで撮った写真を使えるので、3Dレーザースキャナーに比べて安価で簡単に3Dモデル化ができるのが特徴です。
上の画像は、宮城県松島町にある国宝・瑞巌寺の鳳凰木彫りの一部(幅1400mm×高さ815mm×厚さ80mm)を80枚の写真から3Dモデル化したものです。
使用したデジカメは1200万画素、焦点距離75mm(35mm換算)で1.5~2.0mの距離から撮影しています。撮影に約30分、画像処理に約6時間かかりました。
できあがった3Dモデルは、非常になめらかな形をしていますね。
この画像処理技術のベースとなったのは、東北大の青木研究室が開発した「位相限定相関法」という技術で、2枚の写真から3Dモデルを作成する従来のステレオ技術に比べて、高精度のモデルが作れるのが特徴です。
というのも、複数の写真間で対応する点の位置を、
1画素以下の精度
で推定することができるからです。
凸版印刷はこの画像処理技術を、文化財のデジタルアーカイブを作成するときの3次元計測システムとして活用していく予定です。
また、東北大とさらなる精度の向上や3Dモデル化できる対象物の拡大を図り、作業分野の計測システムとしての展開していきます。
無人機に搭載したデジカメで撮った写真から、建物や土木構造物、地形などの3Dモデルが作れると、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)でも、大いに活用できそうですね。