走るデータセンター出動!NTTがフィリピン被災地で通信復旧支援
2015年1月9日

管理人のイエイリです。

フィリピンのセブ島北部のサンレミジオ市(人口:約6万4000人)は、2013年11月の台風で大きな被害を受け、通信システムが途絶えました。

そのため、被災直後は被害状況を人力で収集し、外部への報告は市長の衛星携帯電話1台だけで行われました。

 

サンレミジオ市の位置(左)と被災前の通信ネットワーク(右)(資料・写真:NTT、NTTコミュニケーションズ。以下同じ)
サンレミジオ市の位置(左)と被災前の通信ネットワーク(右)(資料・写真:NTT、NTTコミュニケーションズ。以下同じ)

そこで日本電信電話(NTT)およびNTTコミュニケーションズは、総務省とフィリピン科学技術省、国際電気通信連合(ITU)とともに、通信の即時回復を可能とする実証実験を2014年12月から2015年9月までの期間で実施しています。

現地に派遣する「移動式ICTユニット」は、避難所などを短時間でWi-Fiエリア化し、通話やデータ通信機能をできるもので、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

ワゴン車とアタッシュケース

 

で構成されているため、機動力バツグンなのです。

移動式ICTユニットを構成するワゴン車とアタッシュケースの装備

移動式ICTユニットを構成するワゴン車とアタッシュケースの装備

ワゴン車(ICTカー)には、災害対策用の小型交換機(IP-PBX)と、太陽光パネルやバッテリーを備えた複数の自立型Wi-Fiアクセスポイントを搭載しています。

見通しの良い環境であれば半径500mエリア内のスポットを短時間でWi-Fiエリア化します。被災者は、自分のスマートフォンをICTカーにWi-Fiで接続すると、専用アプリでWi-Fiエリア内にいる相手と、いつもの電話番号で通話できるようになります。

そしてICTカーを光回線や衛星回線などに接続すると、被災地の外側にいる相手とも通話などができます。ICTカーは、搭載したガソリン燃料で、最大5日間程度の運用が可能となっています。

このほか、ICTカーには被災者が持つ交通用のICカードや携帯電話のIDに、被災者の写真や個人情報をひも付けして迅速に被災者データベースを構築、安否確認サイト(j-anpi)を立ち上げられるようになっています。

ICTカーによる被災地のWi-Fiエリア化機能

ICTカーによる被災地のWi-Fiエリア化機能

一方、アタッシュケース(ICT BOX)には、小型交換機(IP-PBX)機能を持つパソコンのほか、バッテリーやWi-Fiアクセスポイントなどを搭載しています。

このボックスを被災地に持ち込むことで、即座に周辺の通話手段を提供することができます。

アタッシュケース型ICT BOXの中身

アタッシュケース型ICT BOXの中身

この移動式ICTユニットは、東日本大震災を契機にNTTやNTTコミュニケーションズのほか、富士通、東北大学が総務省からの委託により研究開発されました。

さらに、ICTカーにはもう一つ、大きな機能として、

 

データセンター機能

 

を搭載しており、被災地の地方自治体や病院などが使用しているシステムを、ICTカーが提供する仮想サーバーに移行すれば、組織ごとにシステムを簡易に復旧することができます。

いわば、“走るデータセンター”が被災地に駆けつけるというわけですね。

サンレミジオ市では、既に住民や現地の技術者向けにスマートフォンを活用した通話機能や技術などの説明会を行っています。

20150109-image3

この実証実験は、国連プロジェクト(ITUプロジェクト)として実施するものです。2014年5月に、日本の総務省とフィリピン技術科学省、ITUの3社が合意文書を締結し、このプロジェクトが実現しました。

2014年5月に行われた協力合意文書の締結式

2014年5月に行われた協力合意文書の締結式

被災地の通信復旧は、Wi-Fiと連携するスマホが普及したことで、有線の時代よりもスピーディーに行えるように思います。

東日本大震災の経験を、海外の被災地復旧に生かすプロジェクトが、ITの分野でも行われるのは有意義なことですね。

(Visited 1 times, 1 visits today)

Translate »