建設業も宇宙ビジネスを!アイデアコンテストで大林組が健闘
2017年11月1日

管理人のイエイリです。

日ごろ、地球を相手に仕事をしている建設業ですが、ロケットや人工衛星、宇宙ステーションなどを駆使した宇宙ビジネスもだんだん、身近になってきたようです。

10月30日、東京・六本木で宇宙ビジネスのアイデアを競うコンテスト「S-Booster 2017」の最終選考会が行われました。ゲストに女優の剛力彩芽さんや宇宙飛行士の若田光一さん、特別審査員に女性宇宙飛行士の山崎直子さんを迎えるなど、豪華メンバーが顔をそろえました。

豪華メンバーが顔をそろえた「S-Booster 2017」の最終選考会で。左から若田光一さん、剛力彩芽さん、大賞受賞者の松本紋子さん、山崎直子さん(以下の写真:家入龍太)

豪華メンバーが顔をそろえた「S-Booster 2017」の最終選考会で。左から若田光一さん、剛力彩芽さん、大賞受賞者の松本紋子さん、山崎直子さん(以下の写真:家入龍太)

会場後方には多数のテレビ局のカメラや報道陣の姿も

会場後方には多数のテレビ局のカメラや報道陣の姿も

建設業と宇宙ビジネスの近さを感じたのは、この日、発表した15チームの中に

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

大林組関係の2チーム

 

が残っていたからです。

そのうち、全員が大林組社員のチーム「Luna Treasure Seekers」は「サステナブルな資源開発に向けた月面基地建設」というテーマでプレゼンテーションを行いました。

このチームは大林組原子力本部技術部の有志6人で結成されました。発表者の小田観世さんは、冒頭に「このペットボトルに入った水1リットルを月に輸送するコストは、1億円です」と、水の貴重さを印象づけました。

しかし、月面には大量の氷や「レゴリス」と呼ばれる堆積物があり、これらを材料として活用すれば、現地の材料を生かした月面基地の建設が可能であることを、制限時間3分間で語りました。

発表者の大林組原子力本部技術部の小田観世さん。ペットボトルをかざして、月面まで水を運ぶ困難さを印象づけた

発表者の大林組原子力本部技術部の小田観世さん。ペットボトルをかざして、月面まで水を運ぶ困難さを印象づけた

月面の氷とレゴリスなどを使って月面基地を建設する構想を発表した

月面の氷とレゴリスなどを使って月面基地を建設する構想を発表した

その次に登壇したチーム「ハプティクスターズ」にも、大林組の社員4人が参加しており、「力触覚技術を適用したロボットアームによる宇宙での作業の高機能化」というテーマで発表しました。

1時間の労働コストが500万円とも言われる“高コスト”の宇宙飛行士の代わりに、繊細な力加減ができるロボットアームを使って宇宙空間での作業を低コストで行う構想です。

チーム「ハプティクスターズ」によるロボットアーム開発についての発表。左端が大林組機械部技術開発課担当課長の上條宏明さん

チーム「ハプティクスターズ」によるロボットアーム開発についての発表。左端が大林組機械部技術開発課担当課長の上條宏明さん

これらのチームは、残念ながら最優秀の大賞受賞には至りませんでしたが、ハプティクスターズは審査員特別賞を受賞し、賞金10万円を獲得しました。

右から2人目が、審査員特別賞を受賞した「ハプティクスターズ」の発表者、野崎貴裕さん(慶應義塾大学)

右から2人目が、審査員特別賞を受賞した「ハプティクスターズ」の発表者、野崎貴裕さん(慶應義塾大学)

そして、栄えある大賞に輝いたのは、全日本空輸(以下、ANA)に勤める松本紋子さんの「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システムの構築」でした。

飛行機の飛行計画を作るとき、なるべく逆風を避け、追い風を最大限に利用できるルートや高度を選ぶと、燃費は大幅に節約できます。しかし、太平洋や大西洋といった海の上では、現在、風の正確なデータを取れていません。

そこで、風の状況を3次元で観測できるドップラーライダーを、地球から265kmまたは350kmの高度を飛ぶ衛星に搭載し、空から風向や風速を観測しようというアイデアです。

発表する全日本空輸の松本紋子さん

発表する全日本空輸の松本紋子さん

衛星に搭載したドップラーライダーで上空の風を3次元計測しようというアイデア

衛星に搭載したドップラーライダーで上空の風を3次元計測しようというアイデア

この発表は実現可能性が高く、もたらす効果も大きいと高く評価され、大賞とスポンサーからのスカパーJSAT賞をダブル受賞し、

 

賞金400万円をゲット

 

するという快挙でした。

松本さんはお茶の水女子大理学部物理学科や、同大学院修士課程で流体力学を専攻し、プログラミングで流体の可視化研究を行いました。

ANAに入社後は、運航管理業務などに携わり、パイロットに飛行計画を説明したり、飛行機操縦関係のマニュアル作成業務などを行っています。

このプロジェクトが実現したら、得意の流体解析の力を生かして、太平洋や大西洋上の“3D風予報”へと、さらに進化させてくれるのではと、期待が高まります。

この日、発表したファイナリスト全員と審査員、ゲストの集合写真

この日、発表したファイナリスト全員と審査員、ゲストの集合写真

建設業でも、情報化施工による測量や施工にGNSSの位置情報を利用したり、トンネル工事でのミリ単位の沈下計測土地利用変化の観測に合成開口レーダー衛星のデータを利用したりと、宇宙ビジネスに発展しそうな事例が増えています。

S-Boosterは来年も開催するそうですので、我こそはという建設業の関係者は、今からアイデアを温めて応募してみてはいかがでしょうか。

(Visited 1 times, 1 visits today)

Translate »