管理人のイエイリです。
時代の流れとともに解体される建物には、その空間で過ごした人々の思い出が詰まっています。
東京・神田駿河台にある日本大学理工学部5号館の建物もその1つ。1959年に竣工し、これまで約60年にわたって使われてきた教室や廊下、階段などには、ここで学んだ学生にとって、数々の青春の思い出が宿っています。
そこで、日本大学桜門建築会の青年部は、かつてない方法で建物に別れを告げるイベントを明日(2018年9月15日、土)に行うことになりました。
そこのイベントとは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
「建築の葬式」
なのです。(「建築の葬式」ウェブサイトはこちら)
建物の思い出を「モノ」ではなく「コト」で残そうという試みには、AR(拡張現実)の技術が使われます。
教室や廊下など、思い出のある場所にスマートフォンを向けて、「ありがとう」、「5号館最高」といった具合にコメントすると、バーチャル空間にそのコメントが残ります。
5号館が解体された後の敷地は公開空地となりますが、そこに行って建物があった場所をスマホで見ると、みんなのコメントが残っているという仕掛けです。
このほか、建築の葬式では「5号館を聴く」という企画も計画されています。壁裏などにスピーカーを設置し、5号館がカラフルだった時代などを、建物自体が人間に語りかけてくるという趣向です。
学生は卒業すると建物から巣立っていきますが、逆に建物はずっとその場にあって時代の流れとともに移り変わる学生や景色を見続けています。建物の視点で語られる話というのもこれまでになかったもので、どんなことが語られるのか、興味津々ですね。
一方、建物をバーチャルに保存しようという計画も進んでいます。
5号館のBIMモデル
を作成し、かつての建物空間にタイムスリップできるようにするものです。
最近、古い建物をBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデル化し、デジタルアーカイブとして残す例も増えつつありますが、このバーチャル空間上で歴代60年の卒業生が残したコメントを読んだり、建物の話を聴いたりすると、その空間で学年を大きく超えたコミュニケーションの場にもなりそうです。
長い間、使われた建物には、そこにいた人々が過ごした物語があります。ひょっとすると、建物を舞台にしたSNSなどが生まれてくると楽しいかもしれませんね。
新しい建物の残し方にご興味のある方は、ぜひ、明日(2018年9月15日、土)行われる「建築の葬式」に足を運んでみてください。