管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「MicroStation」などを開発・販売する米ベントレー・システムズが毎年開催するユーザーイベント「Years in Infrastructure 2019」(以下、YII)が10月21日、シンガポールで開幕しました。
欧米ではオートデスクと並ぶBIMソフトベンダーとして知られる同社だけあって、初日のメディアデーには、世界25カ国から133人のメディア関係者が集まりました。
ベントレー・システムズのCEO、グレッグ・ベントレー(Greg Bentley)氏は毎回、開幕のあいさつでBIMに関する新しい概念や方向性を打ち出すので、注目していたところ、今年のテーマは
ナ、ナ、ナ、ナント、
デジタルツイン
だったのです。
デジタルツインとは、直訳すると「デジタルの双子」ということになります。現場や建物、構造物を、そっくりそのままデジタルデータで表現した“双子”をパソコン上に再現し、計画や設計、解析などを行いながら施工や運用・維持管理に生かそうという思想です。
単にデザインのアイデアを表現したBIMモデルではなく、現実に存在する地形や建物などの実物に裏打ちされたBIMモデルという点で、重みがあります。
デジタルツインと一口で言っても、その活用段階にはいろいろあります。
最もシンプルなのは、地図や地形との位置合わせから始まり、クラウドでの3Dモデル共有、時間軸の追加による4Dモデル化へと進みます。施工段階で管理を4Dのデジタルツインで行う場合は、4Dまでが必要でしょう。
その過程ではリアルな現場と仮想のBIMモデルを一体化した施工管理が求められますので、「Microsoft HoloLens」のようなMR(複合現実)デバイスの活用が増えていきそうです。
さらに、完成後の運用や維持管理段階にはIoT(モノのインターネット)センサーによって建物に関する様々な情報をリアルタイムで収集し、デジタルツインと連携させます。
そして様々な
解析やシミュレーション
を行ってその結果を“見える化”し、将来を予測するというこれまでにない運用・維持管理を目指します。
YIIでは毎年、世界のユーザーが同社のソフトやクラウドなどを実際のプロジェクトに活用した事例を競う「YIIアワード」を実施していますが、今年は「デジタルツイン」の手法を使ったプロジェクトが多いとのことです。
ベントレー・システムズでは、施工管理システム「ProjectWise365」や、4Dのデジタルツインを統合・共有する「SYNCHRO」などの製品群を「iTwin」ソリューションとして展開していくようです。
日本の建設会社や設計事務所の間では、大手だけでなく、中小も含めてHoloLensの活用に取り組んでいるところもありますので、知らず知らずのうちに「デジタルツイン」を導入しているのかもしれませんね。
日本のBIM界も、ラグビーワールドカップの日本代表チームのように、世界と肩を並べるところまで進化してきたのかもしれません。