管理人のイエイリです。
建設現場では、作業の手順説明などで現場事務所と作業場を行ったり来たりすることが日に何度もあります。
例えば、説明に5分しかかからなくても、片道10分の距離があれば合計25分もかかってしまいますし、それが2回、3回と積み重なってくると、ちょっとした距離とはいえ「移動のムダ」はバカになりません。
こうした移動のムダをなくそうと、三谷産業(本社:石川県金沢市)とクアンド(本社:福岡県北九州市)は共同で、クアンドが開発した次世代型コミュニケーションツール「SynQ(シンク)」の実証実験を、2019年12月から実際の建設現場で行いました。
作業場所にいる作業員が持つスマートフォンと、現場事務所のパソコンをリアルタイムに接続し、ビデオチャットするシステムですが、映像の上に
ナ、ナ、ナ、ナント、
ARでポインターを表示
して、「ここだよ!」と細かい場所を遠隔で指示することができるのです。(三谷産業のプレスリリースはこちら)
この「AR(拡張現実)ビデオチャット」機能があることで、これまでのようにいちいち作業場所まで出向いて説明する必要がなくなり、現場事務所や遠隔地から問題の場所を確認したり、指示したりできるので、移動時間が削減できます。
また、事務所にいながら作業に対するアドバイスができるので、高齢のベテラン人材の働き方改革にもつながりますね。
このほか、発注者や作業員など多くの現場関係者に、設計図や部材の納まりに不具合が生じたときの変更などを知らせるのに、これまでは同じことを多くの人に電話連絡する「電話のムダ」もありました。
そこで、このツールにはグループチャット機能が付いており、誰かに連絡するとその会話の内容を自動的にテキスト化して、履歴として残すことができるようになっています。
現場の遠隔支援ツールというと、これまではスマートグラスなど高価な機器を使うものが多く、導入時の初期費用が100万円を超えることもありました。
その点、「SynQ」はスマホやパソコン、インターネット環境があれば使えるので、低コストで導入が可能です。
両社は実際の現場でこのツールを約2カ月間にわたって実証実験を行った結果、作業場所にいる若手担当者が現場事務所にあるベテラン技術者に質問や確認が必要になったとき、
往復20分の移動時間がゼロ
になったのです。
この結果に手ごたえを感じた両社は、2020年4月にベータ版をリリースし、2020年夏に正式リリースを予定しています。
最近、スマホのカメラの性能向上は目覚ましく、暗いところなどでは肉眼で見るよりもスマホの映像の方がわかりやすいということもあります。
既存のハードやシステムに、ARポインターなどひと手間加えたことで、現場のムダを大幅に削減できたといううまい使い方だと思いました。