管理人のイエイリです。
リアルな現場の風景に、バーチャルなBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルなどを重ねて表示できるAR(拡張現実)システムの活用機運が高まっています。
先日、鹿島がARデバイス「Microsoft HoloLens2」を使ったシステムを開発中という情報をキャッチし、早速、確かめに行ってきました。
鹿島ではHoloLens2のほか、ニコン・トリンブルが2020年5月に発売したばかりのヘルメット一体型の「Trimble XR10」も既に導入しています。グループ会社を含めると、全社で20台近いHoloLensシリーズがあるそうです。
では、いったい、どんな施工管理システムを開発しているのでしょうか。
取材に対応していただいた鹿島 BIM推進室の課長でBIMマネージャーの近藤理恵子さん自らがHoloLens2を着けてデモンストレーションしてくれました。
HoloLens2から見た風景は、モニターに転送されて私も見ることができます。2分近くかかってHoloLens2にBIMモデルを読み込むと、画面に表示されたのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
超精密な鉄筋モデル
だったのです。
もとのBIMモデルでは200MBくらいはあるとのことでしたが、HoloLens2用に変換したデータは軽いので、頭を上下左右に動かすと、周囲の風景と連動して鉄筋もサクサクと動きます。
前機種のHoloLensだと、これだけの鉄筋モデルは表示できなかったので、HoloLens2は機能的にもかなりパワーアップしていることが感じられます。
建設現場でHoloLensを使ううえで重要なのは、現場と3Dモデルの位置合わせですが、鹿島では巨大な「十字線」を使って原点の位置や回転角を精密に合わせる仕組みを開発していました。
鉄筋モデルをいろいろと眺めていると、ところどころに赤い板がついているところがあります。
これはコンクリートを打設すると、コンクリートの表面に出てきて配管のサポートなどを取り付ける鋼板のモデルです。
鹿島ではHoloLens2を使って、このサポート用鋼板の
出来形管理
を行うシステムを開発しているのです。
他社でもHoloLensを使って配管をつり下げるボルトを取り付ける「インサート」の墨出しを行った例がありますが、このシステムは鋼板の位置をHoloLens2で計測し、設計との誤差を判定できるようです。
そして、HoloLens2のメニューにある書き込みボタンを押す度にcsvファイルがHoloLens2のフォルダーに出力され、それを、事務所のパソコンに転送すると一日の管理表が作れる、というところがミソなのです
このほか2台以上のHoloLens2によって、マスターとクライアントに分け、マスターの操作を強制的にクライアントにシェアしたり、社内のOffice365で稼働するアプリで現場を遠隔支援したりする機能も開発しているそうです。
この取材を行ったときは、新型コロナウイルスの感染予防対策により出勤率が20%に制限されていました。関係者はHoloLens2などを背負って自宅に持ち帰り、在宅勤務で開発を続けていました。
在宅勤務の成果が、現場の生産性向上に生かされるといいですね。