管理人のイエイリです。
日本、世界を問わず建設業の最大の課題と言えば、人手不足と言えるでしょう。日本では建設業の生産性を上げるため、国土交通省が「i-Construction」施策を推進したり、「建築BIM推進会議」を設置して協議を進めたりしています。
これらの取り組みは、世界的に見ると「デジタル・トランスフォーメーション」(DX=デジタル革命)の流れに沿ったものと言えそうです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトベンダーのオートデスクは、米国の調査会社、IDC(International Data Corporation)と協力して世界各国の建設業におけるDXの成熟度と課題についての調査を行い、このほどその結果を公表しました。
まずはDXの成熟度について、個人依存→限定的導入→標準基盤化→定量的管理→継続的革新という5段階で調査しました。
まずは日本の建設関係者が、「DXの成熟度」を評価した結果が次のグラフです。
初期段階(個人依存と限定的導入)が42%、中期段階(標準基盤化)が34%と、「まだまだ日本は始まったばかりだな」、と思うような結果です。
ところが、世界全体と比べてみると
ナ、ナ、ナ、ナント、
日本のDXは進んでいる
といえるのです。(オートデスクのDX調査のウェブサイトはこちら)
DXの成熟度に関する日本と世界の調査結果を比べると、世界全体では初期段階が58%もあり、中期段階以降の比率は日本より小さくなっているのです。
これも国交省がi-Constructionや建築BIM推進会議でリーダーシップを発揮している効果でしょうか。それがじわじわと数字にも出てきているような感じがします。
続いて、「DXの課題」についての調査結果ですが、日本は世界各国と違った形のグラフになっています。
世界全体や米国、ドイツでは「デジタルの投資に関する戦略的ロードマップの作成」がトップに来ています。これはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やICT建機などの導入を今後、どのように進めていくべきかについてのお悩みごとと言えそうです。
一方、日本の結果をみると、戦略的ロードマップはあまり課題として認識されていません。これも国交省のi-Constructionなどで「2025年までに20%生産性を上げる」といった目標が掲げられ、最近は2年前倒しで計画が進んでいるといったことが影響しているのかもしれません。
代わって日本が課題としているのは「デジタル化の成果を図るKPI(評価指標)およびメトリックの確立」と、「デジタルプロジェクトの全体的な統合」です。
日本は技術としてのDX導入というよりも、その先にある生産性向上や業績の向上といった経営戦略にまで進んでいるとも言えそうです。
続いて「DXに対する懸念」事項についてですが、これも日本は世界全体と全然違う結果になっています。
世界全体では「リスクへの効果的な対処」「データセキュリティー」「プロジェクトを予算内で工程通りに完遂」がベストリーとなっていますが、日本では
効果的な技術の欠如
と時代遅れの技術がトップとなっています。
続いて2位が「労働者の安全」、3位が「手動プロセスと時間のかかる重複入力」となっています。
この結果を考えてみると、日本では従来のシステムでも「工期やコスト内に工事を完成させる」ことや「労働者の安全」、「データセキュリティー」といった建設業としての基本的な課題は既に克服されていると考えることもできそうです。
そして、残る課題は新技術をいかに導入し、これまでのムダを省くかというところに集約されているといっても良さそうです。つまり日本の建設業は、DXに前向きに取り組めば、従来の強みをさらに生かせるということです。
上記は調査結果の一部です。さらに詳しい調査レポート「デジタルトランスフォーメーション:日本におけるコネクテッドコンストラクションの未来(原題:Digital Transformation: The Future of Connected Construction)」は、オートデスクのウェブサイトで登録すると無料でダウンロードできるようですので、ご興味のある方はどうぞ。