時速40キロでトンネル変状をデータベース化!リコーが点検事業に参入
2020年9月2日

管理人のイエイリです。

トンネルの点検はこれまで、交通規制を行ったうえ、特殊な高所作業車を使って異常箇所を近接目視で確認し、野帳に手書きするという方法で行われてきました。当然、作業が危険なうえに、多くの人員や時間がかかります。

また、事務所に戻ってからは野帳をもとに変状図や調書の作成などの作業を行わなければいけません。

こうした手間ひまのかかるトンネルの点検・維持管理作業を効率化するため、リコーは点検サービス「リコー トンネルモニタリングサービス」を2020年9月1日に提供を開始しました。

高所作業車の代わりに普通のクルマを使い、

ナ、ナ、ナ、ナント、

時速40キロで走行

しながら、トンネル内壁をクリアに撮影できるのです。(リコーのプレスリリースはこちら

トンネル内部を撮影するクルマ(以下の写真、資料:リコー)

クルマに搭載されたトンネル撮影装置

クルマにはトンネル撮影装置として、リコー独自の「ラインセンサー型計測システム」を搭載します。

トンネル内壁を周方向に照らす「ライン照明」によって最適な明るさにするとともに、複数の「被写体深度拡大ラインセンサーカメラ」で内壁を連続的に撮影します。

トンネル撮影に使われるラインセンサー型計測システムの仕組み

被写体深度拡大カメラとは、近くのものにも遠くのものにもピントが合うように設計されており、従来のカメラに比べて4~5倍の距離範囲を明瞭に撮影することができます。

時速40kmで走行した場合、最少幅0.3mmのひび割れや漏水・チョーキングなどの変状のほか、合いマークを付けたねじの緩みも判別できます。

これまでも、トラックのような専用車両を使ってトンネル内部を点検するシステムはありましたが、どうしてもコストが高くなりがちです。その点、計測システムを普通のクルマに取り付ける今回の方式は、手軽に使えそうですね。

被写体深度拡大カメラのイメージ。手前と奥、中央と左右など距離が違ってもピントが合うように設計されている

異なる距離に設置されたQRコードの写真を比較した例。左は従来のカメラ、右は被写体深度拡大カメラで撮ったもの

撮影した写真はトンネル内部の展開図のように処理され、ひび割れや漏水などの変状を自動的に判別・登録し、変状展開図や写真台帳、トンネル点検結果総括表などの点検調書を

自動的に作成

してくれます。

撮影した写真は展開図のように処理され、変状を自動的に認識・登録して、CADデータまで自動的に作ってくれる

リコーは2019年8月から、ステレオカメラを使って道路の路面点検を大幅に効率化する「リコー 路面モニタリングサービス」を提供しており、今回のトンネル点検サービスは二つめの事業化となります。

ステレオカメラを使って路面点検を効率化する「リコー 路面モニタリングサービス」の点検車両

これまでのトンネル点検は、人間が物理的に構造物に近づく必要がありましたが、リコーはカメラの高性能化によって構造物をクローズアップするという別のアプローチを採用してきました。

トンネル点検業界としては、思わぬ競争相手が参入してきたという見方もできます。人間の五感の代わりにカメラやセンサーが導入されることによる競争相手の変化は、様々な分野で起こりつつあるようです。

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