東急建設がトンネル内でWEB会議! 三相三線式電力線をWi-Fi化
2020年12月25日

管理人のイエイリです。

昨今のコロナ禍で、建設業でもオフィスと自宅の間で行うオンライン会議はすっかりおなじみになりました。

ところが東急建設は一歩、先を行っています。同社は全長1500メートルのトンネル掘削工事(水資源機構発注の豊川用水二期西部幹線併設水路駒場池工区工事)で、

ナ、ナ、ナ、ナント、

坑内でのWEB会議

を行っていたのです。(東急建設のプレスリリースはこちら

トンネル坑内にいる技術者とのWEB会議の様子(特記以外の写真、資料:東急建設)

WEB会議を行うためには、トンネル坑内に無線LAN(Wi-Fi)を構築する必要があります。

これまではLANケーブルを坑口から掘削最前面の「切羽」まで設置し、途中で100メートル以内の間隔でハブやWi-Fiルーターを設置する必要がありました。

ところが重機や作業員が行き交い、発破などの作業も行われる坑内の過酷な環境では、か弱いLANケーブルが物理的に壊れてしまうこともありがちです。

一方、坑内には照明や換気などの機器に電力を供給するための頑丈な仮設電力線も通っています。

トンネル坑内に設置された頑丈な仮設電力線のイメージ(写真:家入龍太)

そこで東急建設は、パナソニック コネクティッドソリューションズ社(本社:東京都中央区)の技術支援を受けて、三相三線式の仮設電力線を使った

高速電力線通信

を採用したのです。

仮設電力線を利用してトンネル坑内に設置された高速電力線通信網の全体イメージ

今回は高速電力線通信「HD-PLCマルチホップ通信方式」を活用した実証実験として行われました。約10カ月の期間中、坑内で通話やWEBカメラを用いた切羽の確認、濁水処理データの自動計測などが問題なく行われました。

通信環境も安定した結果、移動時間の大幅削減や意思決定の迅速化などの業務効率化が実現できたのです。

坑内に十分な通信環境がなかったときは、坑内外の連絡のために「移動のムダ」が多かった

HD-PLC(Hi Definition Power Line Communication)とは、通常の電力線上に短波帯(2MHz~28MHz)の電流を流す通信技術です。パナソニックがこの技術を生み出しました。

ハブの代わりにコンセントに差し込むだけで簡単に通信環境を構築できます。理論上は2000メートルまでHD-PLCが利用できます。

ただ、現行の電波法では、三相三線式電線でのHD-PLCの使用が認められていないので、東急建設は総務省東海総合通信局に「実験用設備」として申請し、実施許可を取得しました。

東海総合通信局のホームページに掲載された実験許可の情報(資料:総務省)

三相三線式の電力線は、幅広く使われていますので、これをLANとして利用できれば、工事現場や建築物、外構などへの通信網拡大には強力な手段になりそうですね。

社会インフラのIoT(モノのインターネット)化やデジタルツイン(デジタルの双子)化を推進するためにも、今後、普通に使える技術に成長していくことを期待したいです。

【ごあいさつ】
2020年の「建設ITブログ」は、今回で最終となります。新年は2021年1月4日から再開します。皆さま、良いお年をお迎えください。

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