管理人のイエイリです。
山奥で行われることの多い山岳トンネル工事で、発注者による立会検査をオンライン会議方式で行う「遠隔臨場」は、特に発注者にとって移動のムダを大幅に削減できるため、生産性向上や労働時間短縮に大きな効果を発揮します。
シャープと鹿島は共同で、山岳トンネル工事現場での使用を想定した「ハイブリッド遠隔コミュニケーションシステム」を開発しました。
しかし、トンネル坑内は通信環境が悪く、地上の現場のようにスムーズな通信が行えないこともしばしばです。
そこで、システム名に「ハイブリッド」と付いているように、現場の状況を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
動画と静止画で同時送信
することにより、遠隔地からもいろいろな判断をしやすくしたのが特徴なのです。(シャープのプレスリリースはこちら)
トンネル現場からは、タブレット端末で掘削面の「切羽」などの状況を撮影し、遠隔地の発注者などに送ります。その際、通信状況に応じて、リアルタイム動画の画質を調整して送信するので、中継が途切れません。
切羽の周囲を動画でぐるりと写せば、現場の形や前後左右の状況を3D的に把握しやすくなりますね。
一方、静止画は現場の岩質などをピンポイントで高精細に記録し、送信できるというメリットがあります。遠隔地にいる発注者は、現場の技術者に静止画を撮影してほしい場所などをポインターで指示することも可能です。
静止画を拡大すると、下の画面のように遠隔地でも岩盤の亀裂や岩質などを確認することができます。
つまり、このシステムがすごいのは、
岩判定の遠隔臨場化
の実現に道を開いたことなのです。
岩判定とは、トンネル地山の岩質の良しあしを判断することです。この判定によってトンネル支保工の太さや内巻きコンクリートの厚さなどが決まるので、トンネルのコストや安全性などに直結する重要事項と言えます。
しかし、これまでの遠隔臨場システムでは、岩判定が行えるほどの画質ではなかったため、現場に発注者が出向いて目視で岩盤を見て判断していました。また切羽に近づくので、岩盤の崩落などの危険もありました。
このシステムを使って、新名神高速道路大津大石トンネル工事の遠隔臨場を行ったところ、遠隔地のモニターで切羽の状態を詳細に目視判定できることが確認されました。
今後、シャープと鹿島はシステムの改良を進めるとともに、トンネル以外の現場にも活用していく方針とのことです。