管理人のイエイリです。
鉄道設備の設計や施工は、列車の運行が終了した夜間に現場を計測したり、設置場所を検討したりと、時間的な制約が多いので何かと大変な作業でした。
例えば、信号機の新設や改良工事では、信号機が運転士の目線から架線柱などにさえぎられないかを確認するため、現場に模擬信号機を立て、運転士が脚立に上って視認性を確保するなど、多くの人員が集まって作業していました。
この大変な作業を効率化するため、JR東日本はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルを使って、
ナ、ナ、ナ、ナント、
視認性を机上で確認
できるシステムを2025年度に導入する予定なのです。(JR東日本のプレスリリースはこちら)
使用するシステムは、富士テクニカルリサーチ(本社:神奈川県横浜市)が開発した鉄道電気設備設計ツール「Railway-Eye」です。
現場を計測した点群データを「Railway-Eye」に取り込み、作成したBIMモデル上に新設する信号機のBIMオブジェクトを配置し、運転士目線から見てどの程度、架線柱などに隠れるのかを定量的に判定します。
視認性が悪い場合は、BIMモデル上で信号の位置を修正すればよいので、これまでのように多くの人が何度も現場を動き回って確認する必要はありません。
JR東日本は、「Railway-Eye」を2022年度に導入し、鉄道電気設備の3Dモデル作成や寸法計測、レイアウト検討に活用してきました。
このほど、3Dモデルに設備の規格や仕様、製造年月、メーカー名などの諸元や、風速・温度などの属性情報を加えたBIMモデルを作成し、平面図や電柱に架線などの取り付け位置や寸法を示した「装柱図」を自動作成する機能が追加されました。
そのため、設計条件や設計内容に変更があっても、BIMモデルを修正するだけで、設計資料をすべて連動して変更できるようになりました。
工事計画が変更された場合は、取得済みの点群データを使うことで、現地調査を省略できます。
これらの機能によって、図面作成や技術検討などの設計業務で、約2割の作業時間削減を目指しています。
2024年7月には土木、電力、信号の担当者が現場で計測した点群データやBIMモデルなどを、部門間で相互に活用できるようにするため、
共通データ基盤
の運用を開始しました。
これにより、施工計画の可視化や工程管理をスムーズに行えるようにするとともに、AI(人工知能)を活用し、過去データとの比較を行うことで、設備の維持管理レベルも向上させる計画です。
建設業の時間外労働時間に上限が設けられる「2024年問題」が4月から本番を迎えましたが、点群やBIMを多くの関係者で共有・活用することで、「移動のムダ」削減や省人化、時短に大きな効果を発揮しそうですね。