管理人のイエイリです。
工事現場には欠かせない小型移動式クレーンですが、操作には技能講習などを受講し、実技試験にパスする必要があります。
ワイヤーに吊り下げられて振り子のように揺れる吊り荷を静止させたり、運転席から吊り荷の位置や高さを正確に判断したりする操作感覚をマスターするために重要なのが、クレーンを実際に操作して“場数”を踏むことですね。
しかし、資格を取るのに必要な技能講習では、実際にクレーンを操縦できるのは1日足らずです。また、無資格の人が実物のクレーンを使って練習するとなると、高価なレンタル料や教官の手配などの課題がありました。
そこで、シンフォニア(本社:東京都調布市)は、無資格の人が思う存分、練習できるようにしました。
小型移動式クレーンを対象に、
ナ、ナ、ナ、ナント、
VR訓練システム
開発し、2020年12月24日に発売したのです。(シンフォニアのプレスリリースはこちら)
これは「小型移動式クレーンVR訓練システム」というものです。
練習生は、VRゴーグル「Oculus Rift S」を装着し、吊り荷やブームの動き、周囲の風景などのVR(仮想現実)モデルを実物大で立体視しながらクレーンをバーチャルに操縦します。
VRのコントローラーは、楽器の「マラカス」のようなものが多いですが、このシステムでは実際のクレーンを模して4本のレバーが付いた特製のコントローラーが用意されています。
また、吊り荷は実際の物理法則に従って揺れや重量感、衝突、落下などを再現するようになっており、ブームを急停止させると大きく揺れます。
これを微妙なレバー操作によって静止させるといった練習も、思う存分できるのです。
VR訓練のコースは、基本的なレバー操作と動作確認から始まり、実技試験の体験や荷振れ制御訓練などが既に開発されています。
また、開発中の訓練には、ブームの展開や格納、リモコンでのクレーン操作、現場用訓練などがあります。
クレーンの実技訓練は、吊り荷を所定のコース通りに空中移動させるというものがあります。このとき、コース脇のポールに吊り荷が当たらないようにブームやフックの高さを操作するのが難しいところです。
そこでこのシステムでは、4方向から見た吊り荷を同時に表示しながら、運転席からの吊り荷の見え方と比較できるようにして、吊り荷の位置を把握する感覚も鍛えられるようになっています。
吊り荷の位置は4方向から見た映像が表示され、運転席から見え方と比べて感覚を養える●
リアルな操作レバーなどが付いたシミュレーターをVRで行うとき、問題となるのはVRゴーグルによってリアルなコントローラーが見えなくなることです。
そのため、本格的な操縦装置が付いたフライトシミュレーターをVRで体験するときなどは、時々、VRゴーグルをずらしてリアルなコントローラーのレバーなどを確認することもあります。
そこで、このクレーン訓練装置で使うVRゴーグルには、自分の手の位置を検知する
ハンドトラッキング
用のセンサーが付いており、自分の手がVR空間に表示されるのです。
ちょっとした機能のようにも思えますが、これがあるとないとでは、訓練への“没入感”が大きく違いそうですね。
気になるお値段ですが、機材費として初期費用が68万円(税別。以下同じ)で、システム利用料としてBasicプラン1カ月3万円、振れ止めトレーニングや模擬試験が付いたPlus版が7万円となっています。
航空会社でジェット旅客機のパイロットを養成するのも、いまやシミュレーターが当たり前の時代です。建設機械のトレーニングもだんだん、そうなっていきそうです。
VRなら大きなコックピットやモニターがいらないので、小型で安価にでき、さらに立体視で見た目の感覚も養えるのがいいですね。